2008 Fiscal Year Annual Research Report
アクチン骨格ダイナミクスにおけるコフィリンの作用機構の解明
Project/Area Number |
19570174
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大橋 一正 Tohoku University, 大学院・生命科学研究科, 准教授 (10312539)
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Keywords | アクチン骨格 / コフィリン / LIMキナーゼ / リン酸化 / GFP / Dronpa / イメージング / 阻害剤 |
Research Abstract |
私たちは、アクチン線維の切断・脱重合因子であるコフィリンの活性制御とその役割について研究を行なってきた。コフィリンは、LIMキナーゼによってリン酸化(不活性化)され、Slingshotによって脱リン酸化(活性化)される。このようなコフィリンのリン酸化が細胞内で時空間的に制御されることが細胞運動、極性形成に重要な働きを持つ。本研究において、コフィリンの活性制御の分子機構を明らかにする目的で、分割GFPを用いた新たなコフィリンの活性測定法を確立した。これを用いてLIMキナーゼの阻害剤の探索を行い、2種類のLIMキナーゼ阻害剤を発見した。また、可逆的光活性化蛍光蛋白質であるDronpaを用いて細胞内の遊離アクチン量を計測する方法を確立し、コフィリンは細胞内の遊離アクチンの約半分を供給していることを明らかにした。本年度は、阻害剤の働きについてさらに詳細な検討を行ない、見出した阻害剤の一つについてT細胞由来Jurkat細胞と高浸潤性の乳癌由来MDA-MB-231細胞の化学走化性に対する阻害効果を見出した。さらに、MDA-MB-231細胞のin vitro浸潤モデルにおいて浸潤を阻害する効果を確認した。一方、Dronpaを用いた解析は手法を改良し、細胞局所における遊離アクチン濃度変化を追跡することが可能となり、刺激依存的な細胞移動における細胞内遊離アクチンの時間変化をとらえることに成功した。これらの解析により、細胞移動におけるLIMキナーゼの活性制御によるアクチン骨格再構築の作用機序の一端が明らかとなってきた。LIMキナーゼ阻害剤は癌転移や炎症抑制等への効果を検証すると共にDronpaを用いた新たな解析方法と組み合わせてコフィリン活性制御の詳細な作用機序がさらに明らかにできると考えられる。
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