2008 Fiscal Year Annual Research Report
ミトコンドリア由来活性酸素種に依存した新規TGFβシグナルとその生物学的意義
Project/Area Number |
19570185
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
柴沼 質子 Showa University, 薬学部, 准教授 (60245876)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金山 朱里 昭和大学, 薬学部, 助教 (10338535)
森 一憲 昭和大学, 薬学部, 助教 (60349040)
野瀬 清 昭和大学, 薬学部, 客員教授 (70012747)
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Keywords | TGFβ / MMP9 / ミトコンドリア |
Research Abstract |
TGFβによるMMP-9の転写制御機構を解析するために、主にマウス乳腺上皮細胞を用い、関与する転写因子についてsiRNAを用いたスクリーニングを行った結果、核とともにミトコンドリアにも局在が示唆されているCREBの関与が示唆された。CREBの発現を低下させるとTGFβによるMMP-9の誘導が特異的、且つ顕著に促進され、逆に過剰発現によってはその発現が抑制された。これらのことからCREBが抑制的にMMP-9の発現制御に関わっていることがわかった。一方、TGFβの主要なシグナル伝達因子であるSmadについて、MMP-9誘導への関与を同様に検討したところ、Smad3、4が促進的に関与していることがわかった。そこで、CREBによる抑制的制御の標的がSmad複合体の転写活性である可能性について、Smad結合配列レポーターを用いて調べたところ、CREBがSmadの転写活性を抑制することがわかった。さらにCREBの変異体を用いた検討から、MMP-9の発現抑制、Smadの転写活性の抑制機能にはCREBのDNA結合能とともにSer-133のリン酸化が必要であることが示唆された。実際、TGFβ処理によりCREBのSer-133のリン酸化が10時間以降促進されることが観察された。CREB以外の関与因子としてHDAC3がTGFβによるMMP-9の転写に抑制的に関与することを見出している。 また、TGFβによるMMP-9の発現は抗酸化剤(N-acetylcysteine)の存在により顕著に促進された。したがって、CREBのリン酸化、或いは転写抑制活性を制御する上流のシグナルとしては、ミトコンドリアから産生された活性酸素による細胞質の酸化状態が重要であることが考えられた。 今後は細胞質の酸化状態が如何に核内の転写因子の活性制御に至るのか、CREBのリン酸化を主な手掛かりとして、CREBとHDAC3、その他の転写関連因子による具体的なMMP-9転写抑制機構を解析する予定である。その成果として、がんの転移に深く関与するMMP-9の発現抑制手段の提案を目指したい。
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