2008 Fiscal Year Annual Research Report
癌の浸潤形質獲得過程におけるArf6の活性化機序の解明
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19570190
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Research Institution | Osaka Bioscience Institute |
Principal Investigator |
橋本 茂 Osaka Bioscience Institute, 分子生物学部門, 研究員 (50311303)
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Keywords | 乳癌 / 癌浸潤 / Arf6 / AMAP1 / ArfGEF / EGFレセプター / チロシンリン酸化 / PHドメイン |
Research Abstract |
本研究は、細胞浸潤を制御する基本的分子機構を明らかにし、どのような制御の破綻が癌細胞の異常な浸潤形質をもたらすのかを解明することを目的としている。申請者は、これまでに、低分子量G蛋白質Arf6、及び、そのエフェクターとして同定したAMAP1が浸潤性の高い乳癌細胞において正常乳腺細胞での高発現をしており、それらの浸潤活性に重要であること、さらに、AMAP1が浸潤活性に必須の複合体を形成すること、その中でAMAP1とcortactinとの結合インターフェースが特異な構造を示し優れた分子標的となることを例示して来た。平成19年度には、EGFRシグナル伝達経路を介した乳癌の浸潤形質獲得過程において、GEP100がArf6の活性化に必須であることを明らかにした。 本研究期間において、マウスモデルの構築と構造解析を進めた。GEP100のConventional遺伝子欠損マウスは、胎生致死となる可能性があることが明らかとなった。現在、どの段階まで発生が進んでいたかの検討を進めつつある。乳癌の浸潤形質獲得との関連を明らかにするため、乳腺特異的GEP100遺伝子欠損マウスの作製を進めている。特に、既に所属する研究機関が保有する乳癌モデルマウス(MMTV-NeuTマウス)との掛け合わせにより、乳癌発生・悪性度の進行がGEP100遺伝子欠損により、どのような影響を受けるか検討を進める。関連事項として、ある種の乳癌細胞株において、GEP100がerbB2と相互作用し、浸潤形質誘導に関与することを示唆する結果を得ている。さらに、GEP100とEGFRとの結合インターフェースの立体構造についてオックスフォード大学のFeller博士のグループと共同研究を開始した。それにより、結合阻害に関する構造的知見を提示し、阻害剤の基本デザインを試み、焦点を絞り込んだ阻害剤の探索を行う予定である。 乳癌をはじめ様々な癌種において、erbBファミリーの高発現と癌の浸潤・転移形質との間に相関があることが知られている。我々の研究成果から、GEP100がerbBファミリーを介したシグナル伝達経路と、乳癌の浸潤形質誘導に必要なArf6の活性化とを結び付ける特異的な、新規シグナル伝達経路の存在すること、さらに、その分子機序から新しい視点からの分子標的となることの可能性が示唆された。
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Research Products
(9 results)