2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19570198
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Research Institution | Miyagi University of Education |
Principal Investigator |
出口 竜作 Miyagi University of Education, 教育学部, 准教授 (90302257)
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Keywords | 刺胞動物 / ヒドロ虫 / エダアシクラゲ / タマクラゲ / 卵成熟 / 放卵 / 光周期 / 神経ペプチド |
Research Abstract |
2種のクラゲ(エダアシクラゲとタマクラゲ)を用い、卵成熟開始の引き金となる刺激に関する研究を行った。まず、フィールド調査を行い、青森県で採集されるエダアシクラゲは暗から明への光環境の変化によって卵成熟を開始して放卵に至る「明タイプ」であるのに対し、宮城県のエダアシクラゲは明から暗への移行によって卵成熟・放卵に至る「暗タイプ」であることを確認した。また、明タイプどうしの子孫は全て明タイプになり、暗タイプどうしの子孫は全て暗タイプになることを明らかにした。明タイプと暗タイプの交配も可能であったが、子孫がどちらのタイプになるかは、今のところはっきりしていない。以上の結果は、明タイプや暗タイプという形質が遺伝的に決定されることを強く示唆している。次に、光刺激の下流で働く因子について解析を進めた。クラゲと同じ刺胞動物であるヒドラから単離された生理ペプチドのうち、神経ペプチドの1種であるHym-355を投与したところ、明タイプと暗タイプの両方のエダアシクラゲにおいて、光環境の変化なしに卵成熟を誘起することができた。一方、タマクラゲ(明タイプ)では、同じくヒドラの神経ペプチドであるHym-53が卵成熟を誘起することが分かった。クラゲの卵巣を細かく切断した断片(卵巣片)に神経ペプチドを投与した場合にも同様に卵成熟が誘起されたが、卵巣から単離した一次卵母細胞に直接投与しても卵成熟は誘起されなかった。また、間接蛍光抗体法により、クラゲの卵巣上皮に神経ペプチドを含む神経細胞が実際に存在することを確認した。以上の結果は、光環境の変化を受けたクラゲの卵巣内において、刺激の伝達に神経ペプチドが関与している可能性を示唆している。本研究により、クラゲの卵成熟開始機構の解明への糸口となる重要な結果が得られたと考えている。
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