2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19570198
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Research Institution | Miyagi University of Education |
Principal Investigator |
出口 竜作 Miyagi University of Education, 教育学部, 准教授 (90302257)
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Keywords | 刺胞動物 / ヒドロ虫 / エダアシクラゲ / 卵成熟 / 放卵 / 放精 / 明暗変化 / 神経ペプチド |
Research Abstract |
宮城県に生息するエダアシクラゲは、明から暗への光変化(暗刺激)に反応して卵や精子を放出する。この時、メスにおいては、暗刺激による放卵に先立って卵巣内の卵母細胞の卵成熟が起こること、ヒドラから単離された神経ペプチドHym-355(FPQSFLPRG-NH2)が、暗刺激なしに卵成熟・放卵を誘起することが分かっていた。本年度の研究により、Hym-355投与がメスにおける放卵のみならず、オスにおける放精も引き起こすことが明らかとなった。また、Hym-355と同様の放卵・放精の誘起効果は、Hym-355Δ(SFLPRG-NH2)、バソプレシン(CYFQNCPRG-NH2)、バソトシン(CYIQNCPRG-NH2)にも見られたが、N末端がアミド化されていないHym-355-OH(FPQSFLPRG)には見られなかった。次に、ペプチドのC末端のアミド化を触媒する酵素は、銅イオン依存的であることから、銅イオンのキレーターを投与したところ、暗刺激による放卵・放精は抑制されたが、Hym-355投与による放卵・放精は抑制されなかった。さらに、間接蛍光抗体法により、卵巣や精巣の上皮にHym-355抗体に陽性の細胞が存在することを確認した。以上の結果は、N末端側にPRG-NH2の配列を持つペプチドがエダアシクラゲの放卵・放精を引き起こすこと、このようなペプチドが実際に生体内に含まれ、暗刺激の下流で働いていることを示唆している。本研究により、光環境の変化から放卵・放精に至るまでの作用機序を解明していく上で、重要な基礎となる成果が得られたと考えている。
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