2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19570198
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Research Institution | Miyagi University of Education |
Principal Investigator |
出口 竜作 Miyagi University of Education, 教育学部, 准教授 (90302257)
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Keywords | 刺胞動物 / ヒドロ虫 / エダアシクラゲ / 卵成熟 / 放卵 / 放精 / 明暗変化 / 神経ペプチド |
Research Abstract |
宮城県の石巻や松島に生息するエダアシクラゲは、明から暗への光変化に反応して卵や精子を放出する「暗タイプ」であるのに対し、青森県の青森市浅虫には、暗から明への光変化により放卵・放精に至る「明タイプ」が存在することが分かっていた。今回、青森県の下北半島における調査において、陸奥湾側の川内や大湊からは明タイプが、太平洋側の下風呂からは暗タイプが採集された。この両タイプでは、放卵・放精のための光刺激が逆であるのに加え、放出する卵の直径が異なっており、明タイプの卵は暗タイプの卵よりも有意に大きかった。これらの違いにもかかわらず、明タイプと暗タイプ間で交配を行った場合、常に90%以上の確率で受精が起こり、受精卵は正常に発生した。また、両タイプともに、神経ペプチドであるHym-355(FPQSFLPRG-NH2)の投与により放卵・放精が誘起されること、生殖巣にHym-355抗体に陽性の細胞が存在することも明らかとなった。さらに、クラゲから生殖細胞を含む上皮組織の一部を単離し、上皮片を作製した場合にも、光刺激やHym-355投与により放卵が誘起されることが分かった。以上の結果は、光刺激の下流で神経ペプチドが働くことにより放卵・放精が起こることは、明タイプ・暗タイプに共通したメカニズムであること、両タイプは地理的かつ生殖的に隔離された、すなわち種分化の過程にあるグループであることを示唆している。本研究により、エダアシクラゲが光受容、配偶子放出、受精、種分化など、多岐にわたる現象を追究していく上での基礎的知見を得ることができた。
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