Research Abstract |
マウス肝臓における胆管形成機構を明らかにするため,肝臓変異マウスを用いて,次の研究を実施した。(1)肝特異転写因子の一つであるCIEBPαの遺伝子欠失マウス肝臓では,肝細胞の成熟化がおこらないが,同時に胆管形態形成も異常であるため,肝細胞の成熟化と胆管形態形成がカップルしていると考えた。これを証明するため,CIEBPα遺伝子座について野生型-ヌル型マウス間でキメラマウスを作製し,その肝臓構築を解析する計画だが,本年度はその予備実験を行った。集合法によるインビトロでのキメラ胚の作出に既に成功し,現在,胚を偽妊娠雌マウスへ移植中である。平成20年度内には解析し,成果を出す予定である。(2)invマウス肝臓における胆管形態形成に他器官からの因子(ホルモン)が直接関わるか,そのホモ型個体における内分泌器官の異常を解析した。脳下垂体,甲状腺,副腎,膵臓などを形態学ならびに免疫組織化学的(各種ホルモンの発現など)に解析したところ,膵臓の外分泌部が嚢胞を形成することを見つけた。他の内分泌器官は多少発生が遅れるが,異常は認められなかった。他方,ホモ型肝臓における胆管形態異常は,胆管だけにとどまらず,胆管,肝動脈と門脈からなる"門脈トライアッド"の異常であることを発見した。ホルモンが,直接胆管形態形成を制御しているかはまだ解析が必要だが,inv変異の責任遺伝子であるinversinの発現を肝臓の発生過程で再検証すべきと考えられた。
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