2008 Fiscal Year Annual Research Report
マラリア原虫sera遺伝子ファミリーの系統進化発生の解明と免疫抗原としての作用
Project/Area Number |
19570218
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
有末 伸子 Osaka University, 微生物病研究所, 助教 (00242339)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀井 俊宏 大阪大学, 微生物病研究所, 教授 (80142305)
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Keywords | マラリア / sera遺伝子 / 遺伝子ファミリー / 系統進化 / 転写解析 |
Research Abstract |
当該研究課題について、本年度は昨年度に引き続き霊長類マラリア原虫10種についてsera遺伝子の配列を決定しファミリー構造の解析とsera遺伝子の系統解析および、発現解析を行った。seraは、シゾントが壊裂して原虫感染赤血球からメロゾイトが放出されるプロセスで機能するシステインプロテアーゼである。seraのホモログは全てのマラリア原虫に保存的に存在し、互いに相同性の高い遺伝子がタンデムに並ぶ遺伝子ファミリーを形成している。遺伝子ファミリーを形成しているマラリア原虫の抗原分子は抗原変異を示す場合が多いが、seraは抗原変異を示さず抗原多型も少ないため有力なワクチン候補抗原であるが、遺伝子ファミリーを形成している理由は解明されていなかった。seraはマラリア原虫の進化の過程において、重複や欠損をを繰り返しており、げっ歯類マラリア原虫では、sera遺伝子のレパートリーが5つであるのに対して、三日熱マラリア原虫とその近縁種では、遺伝子重複、欠損、フラグメント化、偽遺伝子化が高頻度に生じた結果、SERA遺伝子数が6から12と種問で大きく異なっていた。また、その変化はプロテアーゼドメインの活性中心がシステインからセリンに置換されているSERA遺伝子のグループの中で生じていることが系統樹推定から解析された。sera遺伝子の発現解析からは、シゾントの壊裂に関わるseraが、げっ歯類マラリア原虫と霊長類マラリア原虫では異なるグループに属するものであることが観察され、シゾントの壊裂という原虫の増殖に必須なプロセスにおいて、霊長類マラリア原虫とげっ歯類マラリア原虫ではその分子機序が異なっていることが示唆された。マラリア原虫の進化の過程において、sera遺伝子が重複により遺伝子レパートリーを変化させていったのは、多様に変化した宿主赤血球に適応するためであった可能性が高いと考えられた。
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Research Products
(4 results)