2007 Fiscal Year Annual Research Report
イチジク属植物とイチジクコバチの共進化のメカニズムの解明
Project/Area Number |
19570225
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Research Institution | JT Biohistory Research Hall |
Principal Investigator |
蘇 智慧 JT Biohistory Research Hall, 研究部門, 研究員 (40396221)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東 浩司 京都大学, 理学研究科, 助教 (50362439)
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Keywords | イチジク属 / イチジクコバチ / 共進化 / 分子系統 / 28S rRNA遺伝子 / ITS / COI遺伝子 / 葉緑体DNA |
Research Abstract |
イチジク属植物とイチジクコバチとの関係は種特異性の最も高い共生関係の一つで、「1種対1種」関係と言われている。そのため、昆虫と植物との共進化と同調的種分化を研究するためのモテルシステムでもある。共進化と同調的種分化のメカニズムを解明するためには、イチジク属植物とイチジクコバチとの「1種対1種」関係の維持機構を明らかにする必要がある。そこで、我々は今回、ミトコンドリアCOI遺伝子を用いて、メキシコの各地から採集したイチジクコバチの系統関係を解析し、「1種対1種」関係の厳密性を調べた。その結果、メキシコ産イチジク属の送粉コバチはまず2つのグループに大きく分かれた。そのうちの1つはPharmacosycea亜属に送粉するもので、もう1つはUrostigma亜属に送粉するものである。しかし、各グループ内では、同種のイチジク植物に送粉するコバチが系統樹上同一クラスターを形成せず、逆に異なるイチジク種の送粉コバチが相同な遺伝子配列を有するケースも見られた。パナマ産のイチジク属の送粉コバチのデータを加えて解析した結果においても、同様に送粉コバチの系統関係と宿主との関係の不-致が示された。これらの結果は以下のことを示唆した。1)メキシコ産イチジク属と送粉コバチとの「1種対1種」関係が崩壊している可能性がある。2)イチジク属とイチジク送粉コバチとの協調的種分化を裏付ける系統的証拠が得られていない。3)宿主転換が頻繁に起きているかもしれない。また、我々の結果はPharmacosycea亜属、Americanaセクションに送粉するコバチが短期間で一斉放散した可能性があることを示唆している。
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