2008 Fiscal Year Annual Research Report
イチジク属植物とイチジクコバチの共進化のメカニズムの解明
Project/Area Number |
19570225
|
Research Institution | JT Biohistory Research Hall |
Principal Investigator |
蘇 智慧 JT Biohistory Research Hall, 研究部門, 主任研究員 (40396221)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東 浩司 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教 (50362439)
|
Keywords | イチジク属 / イチジクコバチ / 共進化 / 分子系統 / 遺伝子 |
Research Abstract |
イチジク属植物Ficus(クワ科)とイチジクコバチとの間、子孫を残すという共通利益のもとで、「1種対1種」という極めて厳密な相利共生関係が成立していると言われている。この厳密な共生関係から、両者間の「共進化(coevolution)」説と、「協調的種分化(cospeciation)」説が提唱されている。近年の分子系統解析の結果は大まかにこれらの説を支持しているが、隠蔽種を含め、1種のイチジクに複数種の送粉コバチが存在していることも指摘されている。我々の予備研究の結果も、メキシコ産イチジク属と送粉コバチの「1種対1種」関係の崩壊を示唆している。従って、イチジク属とイチジクコバチの共生関係と共進化を検証するには、イチジク属各種とその送粉コバチに対する緻密な遺伝的解析が必要である。 日本産イチジク属植物は南西諸島を中心に16種分布している。そのうちの15種およびその送粉コバチを分布域の各地から採集し、植物は葉緑体DNAと核ITS領域を、コバチはミトコンドリアCOIと核28SrRNA遺伝子を用いて網羅的な系統解析を行い、両者(植物とコバチ)の種間関係と種内の遺伝的変異(或いは地域的変異)を明らかにした。その結果、植物とコバチの各種がそれぞれ綺麗な単系統を形成し、宿主の転換が全くみられず、「1種対1種」関係は極めて厳密に維持されていることが分かった。また、植物とコバチの系統関係がほぼ一致しているため、互いに同調的に種分化していることも判明した。種内の遺伝的変異は植物においてもコバチにおいてもほとんど見られない。このことからコバチは島間による隔離が起きておらず、広い範囲にわたって分散し、遺伝的交流をしていることが考えられる。今後、日本産イチジク属とそのコバチの「1種対1種」関係の維持機構を解明したい。
|