2008 Fiscal Year Annual Research Report
野生チンパンジーの肉食行動における狭食性の進化に関する研究
Project/Area Number |
19570229
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Research Institution | Kamakura Women's University |
Principal Investigator |
保坂 和彦 Kamakura Women's University, 児童学部, 准教授 (10360215)
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Keywords | チンパンジー / 肉食行動 / 狭食性 / 狩猟行動 / 映像音声資料 / 野外実験 / 獲物選択性 / アカオザル |
Research Abstract |
平成3年から継続している研究代表者のマハレ山塊国立公園(タンザニア)における野外観察調査によって収集した野生チンパンジーの狩猟肉食行動に関する資料や他調査地における先行研究から出されてきた情報を分析し、平成21年度の野外調査において予定する野外実験において検証すべき次のような仮説を立てた。(1)マハレのチンパンジーにおける獲物選択性の偏りや幅の狭さという現象には、チンパンジーが、獲物遭遇頻度の偶然性に左右されず、アカコロブスを他の獲物(アカオザルなど)より選択的に捕食することが反映している。(2)アカコロブスの大人雄がチンパンジーを威嚇し始めると、チンパンジーは狩猟を中止する確率が高くなる。(3)一緒に遊動するパーティ内の個体数が多いときほど、アカコロブスに遭遇したときの狩猟決定率は高くなる。(4)肉を分配する傾向の高い雄(主にアルファ雄)がパーティに含まれるときほど、狩猟決定率(もしくは成功率)が高くなる。 以上の仮説を検証する野外実験の手順を計画するとともに、再生実験に利用する獲物種の音声刺激の抽出を行った。仮説(1)については、主要な獲物アカコロブス以外に、アカオザル、ブルーモンキー、キイロヒヒ、サバンナモンキーの音声を刺激に加え、再生音声を聞いたチンパンジーの反応を記録する実験を計画した。仮説(2)については、アカコロブスの刺激音声に、大人雄のbarkを含むものと含まないものを用意し、再生音声を聞いたチンパンジーの反応を記録する実験を計画した。仮説(3)と(4)については、パーティ内のチンパンジーの個体構成を確認した上で、アカコロブスの再生音声を聞かせ、チンパンジーの反応を記録する実験を計画した。次年度は、これらの計画の実行可能性をよく吟味した上で、野外調査に臨み、マハレのチンパンジー調査史における初の野外実験の試みを実施したい。
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