2010 Fiscal Year Annual Research Report
野生チンパンジーの肉食行動における狭食性の進化に関する研究
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19570229
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Research Institution | Kamakura Women's University |
Principal Investigator |
保坂 和彦 鎌倉女子大学, 児童学部, 准教授 (10360215)
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Keywords | チンパンジー / 肉食行動 / 狩猟行動 / アカコロブス / キイロヒヒ / 対捕食者行動 / 進化 / 狭食性 |
Research Abstract |
2010年度は、2008-2009年度のマハレ山塊(タンザニア)における野外調査で収集したチンパンジーの狩猟肉食行動の資料を整理するとともに、1996年度調査以降のデータの共有と成果公表のため、調査地を同じくする研究者から同行動に関する情報を進めた。その成果の一部については、2010年9月の国際霊長類学会第23回大会(京都大学)にて公表した。その概要は以下の通りである。1)アカコロブスが8割以上を占める主要な獲物となった1990年代の傾向は、2000年代も不変である。 2)アカコロブスのオトナ雄による攻撃的な対捕食者行動の頻度が局所的に増えているという見解をもつ複数の共同研究者がいる。これをいかに分析的な結論に持ち込むか、共有資料抽出の方針を立てていきたい。合わせて、アカコロブスの対捕食者行動における局所的な差異がチンパンジーの狩猟決定や成功率にどのように影響しているか、分析を進めていきたい。3)1997年に初めて記録されたキイロヒヒに対する狩猟は散発的に続いているものの、頻度はきわめて稀である。狩猟方法はアカコロブスに対する集団追跡型ではなく奇襲型のようである。前者はオトナ雄が中心で興奮した状況で開始されるが、後者は未成熟個体が中心で静かに進行するようである。 以上、キイロヒヒという新奇な獲物に対する肉食行動が定着しているとはいいがたく、アカコロブスのような一部の獲物だけを食物と認識する「肉食における狭食性」が改めて確認された。この性質は屍肉食における消極性とも関連することが考えられ、今後、屍肉食に関する研究や獲物の対捕食者戦略の研究と連携して、ヒト以前の肉食の進化の道筋とその要因を探る手がかりとしていきたい。
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