Research Abstract |
本年度は3編の雑誌論文発表,10編の学会発表を行い,1編の図書を発表した. まず,玄米における粒厚・粒重と食味関連形質との関係を,茨城県産コシヒカリを用いて検討した.その結果,2005年度産米ではそれらの間に相関関係は認められなかったが,2006年度産米では粒厚と食味関連形質との間に相関関係が認められた.したがって,玄米の大きさと食味関連形質との関係は,栽培年次・条件等によって変動するが,粒重よりも粒厚の寄与率が大きいことが明らかになった. つぎに,近年,品質低下の大きな要因と指摘されている,高温登熟条件下で多発する胴割れについて構造的要因を解析した.その結果,登熟初期の高温によって,アミロプラストの増殖異常やデンプン粒の収縮による凹み,アミロプラスト包膜の消失とデンプン粒の分解などが認められ,その後登熟が進んで胚乳内にひずみが生じて胴割れの発生要因となることが推定された.その他,高温登熟条件下の種々の栽培で多発した不完全登熟粒の胚乳構造を形態学的に明らかにした. 一方,不完全登熟粒は,炊飯に伴って完全米のような求心的・同心円状の糊化の進行が妨げられ,いびつな炊飯米となる.この原因として,糊化開始温度が異なるデンプン粒を含む細胞群が存在することが考えられた. 2県で作出された新しい水稲良食味2系統の,炊飯米における微細骨格構造の特徴を調査した.その結果,表面の細繊維状構造および内部の海綿状構造が発達していたことから,粘り,弾力性,柔らかさを有する良食味米であることが判明した. なお,2条オオムギ子実の発芽に伴う胚乳貯蔵物質の分解および構造的特徴を調査し,水稲玄米の場合と比較した.
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