2007 Fiscal Year Annual Research Report
イネのシンク・ソース研究における雌性不稔系統の利用およびバイオマス生産の研究
Project/Area Number |
19580012
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
加藤 盛夫 University of Tsukuba, 大学院・生命環境科学研究科, 助教 (90204502)
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Keywords | イネ / 光合成速度 / 雌性不稔 / シンク / ソース / 物質生産 |
Research Abstract |
イネの物質生産におけるシンクとソースの関係を明確にするために,雌性不稔系統および対照系統の穂を除去して乾物生産を比較することによって,イネの物質生産に及ぼす穂の存在とそのシンク機能それぞれの影響を分けて解析した. 雌性不稔系統FS1および対照系統として反復親の藤坂5号を水田で慣行栽培し,出穂後に穂を切除する穂切除区と何もしない対照区を設定し,出穂期から10日ごとに完熟期(出穂後50日)まで,株を採取して穂,葉身,稈+葉鞘,枯葉および遅発分げつに分別して乾物重を測定し,窒素含有量および非構造性炭水化物含有量を求めた.また,出穂期と穂切除直後から定期的に上位葉身の光合成速度を測定した. 地上部乾物重には,完熟期には系統間および処理区間に有意な差はなく,穂切除による乾物重の低下は,通常は休眠状態にある分げつ芽の成長(遅発分げつ)によって最終的には補償されることがわかった.両系統とも穂切除による直接的な光合成抑制はなく,穂の切除およびシンク機能喪失により葉身の老化が抑制されて光合成機能が維持されることが確認された.地上部窒素蓄積量については穂切除区では対照区に比べて低下する傾向があった. 以上のことから,イネでは穂の有無にかかわらず,そのシンク機能が喪失した場合には栄養成長器官(主に前半は稈+葉鞘,後半は遅発分げつ)が光合成産物のシンクとして機能することで,物質生産の阻害はおこらないことが確認された.しかし,穂の窒素シンクとしての機能は他の器官では十分に補償できないことがうかがわれた.穂切除区では後半に成長速度が増加し,それには遅発分げつの光合成が寄与している可能性があるので,次年度はこの特性を利用する栽培法の検証を行う.
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Research Products
(2 results)