Research Abstract |
イネの耐塩性向上には塩条件下における根の代謝機能の維持が最も重要であると考え,そのメカニズムの解明を目指している.数種作物では,塩ストレス下の根において,活性酸素が発生し,根に障害を起こすことが知られている.これまでに,イネ数品種を用いて塩ストレス下で生育させた結果,根の活性酸素の発生量が異なることを認めるとともに抗酸化酵素であるカタラーゼとアスパラギン酸ペルオキシダーゼの活性に差があることを認めた.そこで,耐塩性品種と感受性品種の活性酸素発生を詳細に検討するとともに,根の活性酸素の主な発生場所であるミトコンドリアにおける活性酸素の発生抑制の品種間差異についても検討した,水耕栽培により生育させ,6-7葉期に塩処理を6日間,行った.感受性品種では,Na吸収量が高く,また,細胞間隙のみを通過するアポプラスティックトレーサーの吸収も高かった,根の活性酸素の発生を蛍光試薬で調べたところ,塩ストレス下の感受性品種では,根端において発生量が高まるのに対して,耐塩性品種では,発生が抑制されていた,また,根の暗呼吸速度は両品種で差がないものの,酸素安定同位体比分別により測定したシアン耐性呼吸速度は,耐塩性品種で高いことが明らかになった.以上のことから,塩ストレス下での根の活性酸素の発生量の品種間差には,抗酸化能だけでなく,シアン耐性呼吸も関係しているものと考えられ,活性酸素による根への障害を回避することが,耐塩性に重要であると考えられた.
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