2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19580020
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Research Institution | National Institute of Agrobiological Sciences |
Principal Investigator |
石丸 健 National Institute of Agrobiological Sciences, 光環境応答研究ユニット, 主任研究員 (80370641)
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Keywords | 倒伏 / イネ / コシヒカリ / 台風 / QTL / 炭水化物 |
Research Abstract |
イネの栽培地域では台風が発生しやすく、毎年多大な被害が引き起こされている。被害を軽減するために、台風に対する倒伏に耐性を持つ品種の作出が望まれている。一方で、耐性品種作出に向けた情報はほとんどなかった。本研究の開始時に私達は、台風における耐倒伏性を高めるQTL(Lrt5)を見出した。このローカスは、現在知られている耐倒伏性の3つのターゲット(草丈、強稈性、支持力)に影響を及ぼさず、全く新しい耐倒伏性に向けた機能を有すと考えられていた。本研究では、コシヒカリとカサラス間の染色体部分置換系統(S1)を用いて、Lrt5の持つ制御メカニズムを明らかにすること並びにLrt5の染色体上の領域を矮小化することを目的としている。昨年度までの解析により、S1では炭水化物が蓄積することにより茎の強度が高まる。その結果、台風による倒伏の起因となる茎の折れ曲がりが発生せず、耐倒伏性が向上すると考えられた。 本年度は、炭水化物の蓄積と茎の強度の関係を明らかにするために、出穂前に止葉下第一葉を様々な大きさに切除し、茎の炭水化物を変化させた。茎に含まれる炭水化物含量は葉の切除に伴い減少した。炭水化物含量とヤング率による茎の折れまがりの強さの評価結果間には高い正の相関(r=0.92)が見られた。これらの結果は、茎における炭水化物の蓄積量が高まることにより折れまがりの強度が高まることを示している。また、S1の止葉下第一葉において老化の指標であるクロロフィル含量は、コシヒカリに比べ有意に高く約1.3倍であった。S1では第一葉の老化が遅く光合成特性が維持されることで、茎の炭水化物蓄積量が増加し茎の曲げ特性が高く維持され(台風による倒伏の起因が抑えられ)、台風による耐倒伏性を高めると考えられた。また、S1にコシヒカリをバッククロスして得られたBC1F2を田圃に栽培し、SPADを用いて収穫時期の第一葉の老化特性(表現型)を評価した。表現型と一塩基多型マーカーを用いたBC1F2の遺伝子型の判別結果からLrt5の染色体上の領域をDNAマーカーS1919とS0575の間(約20cM)に絞り込んだ。
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