2007 Fiscal Year Annual Research Report
遺産地区における森林の役割と保全手法-自然遺産と文化遺産保護の融合を目指して-
Project/Area Number |
19580022
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
黒田 乃生 University of Tsukuba, 大学院・人間総合科学研究科, 准教授 (40375457)
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Keywords | 森林 / 世界遺産 / 自然保護 / 文化財保護 / 景観 |
Research Abstract |
平成19年度は現在登録されている世界文化遺産11地区を対象に、(1)環境省の「自然環境保全基礎調査」による公開されているGISデータを元に、森林をバッファーゾーンにもつ世界遺産地区の植生の自然度を解析し、(2)遺産地区にかかる森林の保護制度を整理した。その結果、(1)原爆ドーム、姫路城など都市域に近接する遺産を除いて、バッファーゾーンでは自然度が7の二次林(代償植生)の割合が多いことがわかった。特に厳島神社ではコアゾーンの7割近くが自然度9の自然林であり、遺産地区における森林保護の重要性が再確認された。また、日光では自然度6の植林地が4割、自然度7の二次林が2割となっている。人工林と二次林では保護手法も異なるため、森林の目標像の明確化をはかり、それに応じた管理手法の検討が必要である。(2)制度においてはほとんどの遺産で自然公園法などの自然保護制度と自治体の条例を併用していることが明らかになった。 石見銀山遺跡とその文化的景観の地区の現地調査からはヤブツバキ、タブなどが多く見られ、また一部には萌芽更新を繰り返したと思われる大木の存在も確認できた。しかし一方では20〜30年生のスギの植林もあり、銀の採掘が修了した後も森林の植生が変化をしていることが明らかになった。銀山絵図などの資料からは銀の採掘には大量の木材が必要であったことが想定されるが、そうした森林利用の痕跡を特定し保護する必要がある。
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