2008 Fiscal Year Annual Research Report
遺産地区における森林の役割と保全手法-自然遺産と文化遺産保護の融合を目指して-
Project/Area Number |
19580022
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
黒田 乃生 University of Tsukuba, 大学院・人間総合科学研究科, 准教授 (40375457)
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Keywords | 森林 / 世界遺産 / 自然保護 / 文化財保護 / 景観 |
Research Abstract |
平成19年度に引き続きGISによる世界文化遺産地域の森林に関する分析、および現地調査を行なった。その結果、「世界文化遺産地域」では77%を森林が占め、そのうち36%が植林地、20%が国有林であること、登録資産では74%が森林であることがわかった。これらの森林は社寺の後背林、産業や生活への利用など歴史的に人との関わりがあり、その結果として石見銀山のタケ類や社寺の後背の照i葉樹林など、特徴的な植生が見られる。しかし、「世界遺産推薦書」には森林の価値及び管理に関する具体的な記述は少なく、森林が文化遺産の価値そのものであるのは3つの原始林めみである。さらに現地調査の結果、現在では古都奈良、古都京都ではナラ枯れが、また石見銀山では竹のテングス病などの被害が発生していることが明らかになった。 「世界文化遺産地域」では、具体的な森林管理計画が必要である。「世界文化遺産地域」の保護にとって必要な森林の役割を踏まえた施業の方針を明確にし、世界遺産に義務付けられている保護管理計画(マネジメントプラン)に、その施業方針を明記することが必要である。そのためには、都道府県及び市町村において、自然保護と文化財保護、森林整備の部署の連携がより強く求められる。 また、今後の推薦資産については、文化的な側面からの評価に加え、植生も含めた自然的な評価も同時に行なう必要がある。森林の植生には歴史的な人為の価値が現れていることからも、文化の価値を客観的に評価する指標となり、具体的な森林の保護管理手法を検討することができる。そのためには、文化的な価値を文化庁、文化的な価値の結果としての種の多様性、植生の特徴などを環境省が評価をすることも可能性として考えられる。バッファーゾーンの森林に関しては、林野庁も含めた森林管理の検討が必要であろう。
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