2009 Fiscal Year Annual Research Report
遺産地区における森林の役割と保全手法-自然遺産と文化遺産保護の融合を目指して-
Project/Area Number |
19580022
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
黒田 乃生 University of Tsukuba, 大学院・人間総合科学研究科, 准教授 (40375457)
|
Keywords | 森林 / 世界遺産 / 自然保護 / 文化財保護 / 景観 |
Research Abstract |
平成21年度は「石見銀山」での事例研究を深め、今後の課題について考察した。 ○「石見銀山」の森林 「石見銀山」は、銀の精錬が自然環境に配慮した小規模な開発の集積であった点が高い評価を受けて世界遺産の登録に至ったとされている。「石見銀山」はバッファーゾーンもあわせた地域の82%の面積を森林が占めている。バッファーゾーンについては大田市が景観保全条例を定めているが、詳細な景観計画はまだ策定されていないため、照葉樹林へと遷移が進み、竹林の繁茂、ナラ枯れによる被害が拡大している。「石見銀山」の森林は近世から現在に至る中で大きく変化していると考えられるが、史跡保護の観点から凍結的な現状維持が原則とされている。登録資産である銀山柵内の森林は史跡であるために竹林を他の植生へと変換することはできず、現在行なわれている竹林の繁茂を食い止めるための管理は「間伐」という消極的なものにとどまり、その効果は検証されていない。また、現状では遺産地区の来訪者の興味対象が「間歩(坑道)」に限られ、本来の銀山と森林植生とのダイナミックな関係の姿を想像できる場がなく、来訪者や地域住民が求める森林のありかたも不明なままであるという問題点が確認された。 ○本研究の今後の課題 日本の世界文化遺産は、バッファーゾーンも含めた面積の77%が森林であり、文化遺産の保護に森林の管理が欠かせないことが明らかになった。歴史的な人のいとなみが現れている森林の植生は、文化の価値を客観的に評価する指標にもなる。しかし、現在の遺産の評価や保護管理計画において森林植生に関する項目はほとんどなく,評価手法の構築、森林施業方針の策定も含めた管理のしくみづくりが求められている。
|
Research Products
(1 results)