2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19580041
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Research Institution | National Agricultural Research Organization |
Principal Investigator |
小林 省藏 National Agricultural Research Organization, 果樹研究所・ブドウ・カキ研究チーム, チーム長 (90355438)
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Keywords | ブドウ / 果皮色 / アントシアニン / MYB / 転写因子 / レトロトランスポゾン / 進化 |
Research Abstract |
ブドウの野生種は果皮色が黒色であるため、野生種において、アントシアニンの合成制御にきわめて重要な役割を果たすMYB様転写因子遺伝子VvmybA1に劣性の突然変異が発生し〔レトロトランスポゾン(Gret1)の挿入〕、変異遺伝子が自然交雑でホモ化したことにより黄緑色品種が生じたという仮説を我々は提唱した。本研究では、野生種をはじめ広範囲のブドウ属の種・系統についてVvmybA1へのGret1の挿入の有無を調査するとともに、Gret1の塩基配列解析等によりブドウ属植物の系統進化を分子レベルで明らかにする。 19年度は、V.viniferaの直接の祖先野生種であるV.vinifera subsp.sylvestrisを含むV.vinifera、及び北アメリカ種群、東アジア種群等のブドウ属の40種・系統についてVvmybA1へのGret1挿入の有無を調べた。その結果、sylvestrisを含めV.viniferaについては、そのほとんど(18/19)でGret1の挿入が認められたが、北アメリカ種群及び東アジア種群ではGret1の挿入は認められなかった。このことは、Gret1の挿入はsylvestrisあるいはその祖先において、それらが北アメリカ種群や東アジア種群から分かれた後に起こったことを示唆する。また、V.viniferaの18品種について挿入Gret1の5'LTRと3'LTRの塩基配列を調べた結果、品種間では5'LTR、3'LTRともに塩基配列に差はなかったが、5'LTRと3'LTRには5塩基の違いが見られた。5'LTRと3'LTR間の塩基配列の差は挿入後の時間経過を現すことが知られており、計算の結果、Gret1の挿入は約46万年前に起こったと推定された。以上のように、Gret1の解析によりブドウ属植物の進化について興味深い新たな知見が得られた。
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