2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19580041
|
Research Institution | National Agricultural Research Organization |
Principal Investigator |
小林 省藏 National Agricultural Research Organization, 果樹研究ブドウ・カキ研究チーム, チーム長 (90355438)
|
Keywords | ブドウ / 果皮色 / アントシアニン / MYB / 転写因子 / レトロトランスポゾン / 進化 / SSR解析 |
Research Abstract |
ブドウの黄緑色品種では、アントシアニンの合成制御にきわめて重要な役割を果たす転写因子遺伝子VvmybA1の上流にレトロトランスポゾン(Gret1)が挿入されており、このGret1が同遺伝子の発現を抑制するため着色しないことが明らかにされている。ブドウの野生種は果皮色が黒色であり、Gret1のVvmybA1への挿入が黄緑色品種が生じた原因と考えられるが、ブドウの進化上いつGret1の挿入が起こったかは非常に興味がもたれる点である。本研究では、広範囲のブドウ属の種・品種についてVvmybA1へのGret1の挿入の有無を調査するとともに、Gret1の塩基配列解析等によりブドウ属植物の系統進化を分子レベルで明らかにする。 19年度に、ヨーロッパブドウ(V.vinifera)の直接の祖先野生種であるV.vinifera subsp.sylvestrisを含めヨーロッパブドウについてはそのほとんどでGret1の挿入が認められるが、北アメリカ種群及び東アジア種群ではGret1の挿入は認められず、Gret1の挿入はsylvestrisあるいはその祖先が北アメリカ種群や東アジア種群から分かれた後に起こったことを明らかにした。また、Gret1の5'-LTRと3'-LTRの塩基配列解析からGret1の挿入は約20万年前に起こったと推定した。20年度は、ブドウ属の種・品種についてSSR解析を行った。その結果、ヨーロッパブドウ、北アメリカ種群及び東アジア種群は明確にグループ分けされた。また、北アメリカ種群にはVvmybA1のオーソログVvmybA1-3が存在すること、VvmybA1の対立遺伝子VvmybA1^<SUB>は、ヨーロッパブドウの東アジア系品種にしか存在しないこと等が明らかとなった。以上のように、本研究によりブドウ属の種・品種の類縁関係およびその派生関係について新たな知見が得られた。
|