2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19580060
|
Research Institution | National Institute of Agrobiological Sciences |
Principal Investigator |
谷合 幹代子 National Institute of Agrobiological Sciences, 昆虫科学研究領域・制御剤標的遺伝子研究ユニット, 上級研究員 (60370665)
|
Keywords | 昆虫 / 摂食行動 / オレキシン受容体 |
Research Abstract |
昆虫の摂食行動を調節する神経ペプチドについては、まだよく解明されていないが、摂食行動を調節するしくみの解明は、農業害虫の制御剤開発に重要な知見となる。哺乳類の摂食行動を元進する神経ペプチドのひとつであるオレキシンは、無脊椎動物では存在が確認されていないが、カイコやコクヌストモドキのゲノム情報を調べると、ヒトやマウスのオレキシン受容体遺伝子と非常によく似た遺伝子があった。そこで、オレキシン受容体の昆虫における機能を明らかにするため、遺伝子を単離し機能を解明することを目的とした。まずカイコのオレキシン受容体に似たタンパク質をコードする遺伝子(BmOXR遺伝子)が、どの器官で発現しているかを調べたところ、脳や摂食一次中枢である食道下神経節で強く発現していることが分かった。カイコは幼虫期に摂食し、成虫期は何も食べないが、BmOXR遺伝子は幼虫、踊,成虫のいずれの時期の脳でも発現していた。幼虫期では、飢餓状態にすると遺伝子発現量が上がるため、体内の栄養状態の変化に応じて発現量が調節されているものと考えられた。次に、ゲノム情報から得られたBmOXR遺伝子配列は一部分であったため、幼虫脳から全長遺伝子を単離したところ、1つのゲノム配列から、両端の構造が少しずつ異なる数種類の遺伝子を転写することが分かった。このうち主に発現していると考えられる3種類の遺伝子について、タンパク質を発現するベクターに挿入し、培養細胞に導入して機能解析を進めている。また、遺伝子から翻訳されるタンパク質の配列を予測し、すべての転写物に共通するアミノ酸配列の中から13アミノ酸配列を選び、合成ペプチドを作成して抗体を作成中である。この抗体は、脳や食道下神経節におけるBmOXR遺伝子の脳における発現細胞の同定などに利用する計画である。
|