2008 Fiscal Year Annual Research Report
北方タイガ生態系における長期炭素固定に貢献する有機物の形態
Project/Area Number |
19580070
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
川東 正幸 Nihon University, 生物資源科学部, 講師 (60297794)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
隅田 裕明 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (70147669)
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Keywords | タイガ林 / 永久凍土 / 炭素貯留 / シベリア / 森林火災 / 溶存有機物 / O層 / ハンモック地形 |
Research Abstract |
北方タイガ林下の土壌の炭素貯留に果たす役割は大きい。その土壌炭素の最も重要な給源は厚く堆積したO層であり、O層から供給される種々の有機態炭素の土壌への集積が長期炭素固定を可能にしていると考えられる。そのO層が同地域で頻発する地表面火災によって一部が焼失または変質し、炭素供給/貯留ポテンシャルを低下させていることが予測される。そこで火災で燃焼変質したO層から形態別に有機物の画分を得て、量・質的側面からO層を評価した。O層は火災発生年度別に採取し、表層植生の回復に伴うO層の変化を追跡した。 火災を受けたO層は炭素含量が低く、C/N比が低かった。これは火災によって、O層上部の高いC/N比の有機物が焼失したためであると考えられた。火災後、50年まで全炭素量・窒素量ともに増加の傾向にあり、対照区のO層の値に近くなった。水溶性有機物含量(WEOC)も同様の傾向を示し、全炭素量とWEOCの間には有意な正の相関関係が認められた。また、抽出腐植量も同様に全炭素量に依存する傾向にあった。これらことから、調査地O層の溶存有機物および腐植の含量は燃焼によるO層の質の変化よりも炭素量に強く依存することがわかった。同時にWEOCとpHの間には負の相関関係が認められ、O層の回復に応じて酸性化が進行すると考えられた。一方、永久凍土分布域では凍結融解の繰り返しによる凸凹したハンモック地形が発達するが、その凹地のO層は火災の影響を受けにくいことを反映し、面積当たりの全炭素量が高く、腐植含量および水溶性有機物量が凸地よりも高かった。このことは土壌断面内での炭素量分布に影響していると考えられた。土壌断面内でのA層の不連続な水平分布は凹地に蓄積したO層からクライオターべーションや溶存有機物の鉱質土壌への吸着によって生じていると考えられた。このように、形態の異なる有機物の地形に応じた分布がタイガ林下の土壌生成に深く関与することが予測された。
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Research Products
(6 results)