2009 Fiscal Year Annual Research Report
葉緑体型アルドラーゼのグルタチオンによる制御の分子機構とその生理的意義
Project/Area Number |
19580073
|
Research Institution | Research Institute for Biological Science Okayama |
Principal Investigator |
小川 健一 Research Institute for Biological Science Okayama, 専門研究員 (70344405)
|
Keywords | グルタチオン / 二酸化炭素 / 光合成 / レドックス / 暗反応 / アルドラーゼ / バイオマス増産 / 収穫量向上 |
Research Abstract |
グルタチオンはタンパク質のシステイン残基と結合し、タンパク質の機能を制御すると考えられる。本研究では、葉緑体型アルドラーゼFBA1のグルタチオンによる活性制御機構とその生理的意義を明らかにするために、アルドラーゼ中のシステイン残基をアラニンに置換した変異酵素を導入した植物をfba1変異体を背景に作製した。fba1変異体は他のアイソザイム変異体よりも光に対する感受性が高く、高照度の光環境で生育できなかったが、野生型FBA1を発現させるコンストラクトの導入によって感受性は回復した。4つあるシステイン残基のそれぞれについてアラニンに変異させた変異酵素を発現させるコンストラクトを導入すると野生型酵素の場合に比べて、変異体の光感受性の回復は弱かった。特に、FBA1に特異的なシステイン残基をアラニンに置換したコンストラクトでは、回復はほとんど認められなかった。以上から、FBA1に存在するシステイン残基は、アルドラーゼ分子としての分子進化上高等植物にしか保存されていないが、生理的に重要な役割を担っていることが明らかになった。また、3つの葉緑体型アルドラーゼ分子の存在量を定量化し、それぞれの変異体と過剰発現体のアイソザイムのタンパク量と全アルドラーゼ活性との関係を解析した。FBP(フルクトースー1,6-ビスリン酸)の合成活性と分解活性を調べ、少なくともFBA1の比活性が他のアイソザイムよりも高いと考えられ、特にFBPの合成の比活性が高く、その比活性はグルタチオンで高められることが明らかになった。FBA1の発現は全身で認められたが、若い組織での発現や根での発現が比較的高かった。一方、遺伝子発現が低下した時期でもタンパク質の存在量は葉緑体などのプラスチドで認められた。光感受性などの表現型とも合わせて考えると、少なくともFBA1は植物の葉緑体で機能し、その機能はグルタチオンで調節されると考えられた。
|