2008 Fiscal Year Annual Research Report
血糖値低下を誘導するイソロイシンの糖代謝調節シグナル分子としての機能の解析
Project/Area Number |
19580133
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
吉澤 史昭 Utsunomiya University, 農学部, 教授 (10269243)
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Keywords | イソロイシン / 血糖値 / 糖新生 / 肝臓 / 糖尿病 / ラット |
Research Abstract |
絶食時の血糖値維持機構として知られているグルコースアラニン回路に着目して,ラット単離肝細胞を用いて,イソロイシンが肝臓での糖新生を抑制する機構を調べた。糖新生の基質として,肝細胞内へ速やかに供給されるピルビン酸と乳酸,あるいはイソロイシンと共通のアミノ酸輸送体を介して肝臓に供給されるアラニンを用いて,イソロイシンの糖新生抑制効果を評価した結果,糖新生の基質としてアラニンを用いた場合にのみイソロイシンによる糖新生抑制が見られた。また、糖新生の基質としてアラこンを用いてインキュベーションした単離肝細胞中のPEPCKのmRNA量およびG6PaseのmRNA量と活性を測定した結果,イソロイシン添加によってPEPCKのmRNA量およびG6PaseのmRNA量と活性が有意に低下した。以上より,イソロイシンは糖新生の基質であるアラニンの肝臓への供給を阻害し,糖新生酵素の量および活性を低下させることで肝臓での糖新生を抑制する可能性が示唆された。また,イソロイシンの血糖値低下機能を糖尿病治療へ利用することが可能であるかを探るため,糖尿病モデルラットにイソロイシンを経口摂取させて,食中。食後の血中イソロイシン濃度を高く維持することで糖尿病時の食後高血糖の抑制が可能であるかを調べた。その結果,給餌開始直前にイソロイシンを経口投与し,給餌開始と同時に3%イソロイシン溶液を飲料として与えることで食後血糖値上昇の抑制が見られた。また,糖尿病治療における血糖コントロールの指標であるヘモグロビンAlcは,イソロイシン投与で低下した。以上から,食前,食中,食後のイソロイシンの経口摂取は糖尿病時の食後高血糖の抑制に有効であり,糖尿病合併症のリスク軽減に効果的である可能性が示唆された。
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