2007 Fiscal Year Annual Research Report
タンパク質およびアミノ酸による血漿ホモシステイン濃度の制御に関す研究
Project/Area Number |
19580135
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
杉山 公男 Shizuoka University, 農学部, 教授 (00126781)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森田 達也 静岡大学, 農学部, 教授 (90332692)
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Keywords | ホモシステイン / タンパク質 / アミノ酸 / 動脈硬化 / ラット / 栄養学 |
Research Abstract |
動脈硬化の危険因子として知られる血漿ホモシステイン(Hcy)濃度に及ぼす食餌タンパク質およびアミノ酸の影響をラットを用いて検討し,以下の成績を得た。 (1)メチオニン(Met)はHcyの唯一の前駆体であることから,Met摂取量の増加は血漿Hcy濃度を上昇させると考えがちであるが,我々は,高カゼイン食はMet摂取量を増加させるにも拘わらず血漿Hcy濃度をむしろ低下させることを見いだした。この現象の背後には,高カゼイン食がHcy代謝に関わる酵素の活性を大きく上昇させることが関与することを明確にした。 (2)小麦グルテンはカゼインなどに比べて血漿Hcy濃度を低下させることを見いだし,その機構を解析した。小麦グルテンはMetが少なく,シスチンが多いタンパク質であり,またリジンが少ないために栄養価も低い。グルテン食を投与するとカゼイン食に比べて血漿Hcy濃度は有意に低下し,逆に血漿システイン(Cys)濃度は有意に上昇した。血漿Hcy濃度の変化はHcy代謝酵素活性の変化では説明できず,血漿Cys濃度の上昇が関与しているものと推察された。Hcyは血漿中でアルブミン結合型と非結合型で存在している。グルテン食投与による血漿Cys濃度の上昇はアルブミン結合型のHcy濃度や割合を低下させ,これが腎臓などでのHcyの代謝(血中からのクリアランス)を促進し,血漿Hcy濃度の低下をもたらしていると推定した。 (3)(2)の推定を検討するため,血漿Hcy濃度に及ぼす食餌へのCys添加の影響を検討した。L-Cys添加は低タンパク質食を用いた場合にのみ明確な血漿Hcy低下効果がみられた。この場合には血漿Cysの上昇も伴っていた。また,低タンパク質食に少量のMetを添加した場合にはCysの血漿Hcy低下効果は見られなかった。L-Cysは低タンパク質食(=低栄養価)で低Met食の条件下で血漿Hcy低下作用を発揮することが明らかにされた。これらの結果はグルテンの効果をある程度説明しうる知見と思われる。また,代謝されにくいD-Cysも強い血漿Hcy低下作用を有することも見いだした。
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