2008 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀以降の日欧米における林学・林政の展開過程-山地林管理を中心として-
Project/Area Number |
19580165
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
古井戸 宏通 The University of Tokyo, 大学院・農学生命科学研究科, 准教授 (30353840)
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Keywords | 林野利用史 / ドイツ / バーデン=ビュルテンベルク / 北海道 / 山林監守人 / 育林技術 / 森林警察 / 比較林政史 |
Research Abstract |
1.文献調査 独語圏文献について、フライブルクに約10年間研究滞在した碩学である寺下太郎氏(愛媛大准教授)の助力を得て、主としてweb上で予備調査を行った。日本の戦前資料については、昨年時間の制約で収集できなかった文献を、札幌周辺の公立図書館・大学図書館・道立林業試験場(光珠内)図書室等で収集し、目録を更新した。 2.現地訪問調査 上記寺下氏の協力(同行・通訳等)を得て、林政分野の碩学であるBrandl名誉教授宅を訪問し、同氏およびバーデン=ヴュルテンベルク州の退役林務官経験者3名に、同地方における「山林監守入」の任務、公的地位、住民との関係等の歴史的変遷に関する座談形式のヒアリングを行い、併せて文献多数を、入手した。このほか、フライブルクおよびミュンヘン近郊の図書館・文書館(大学図書館、狩猟博物館等)において、山林監守人や土地制度に関する文献を中心に収集した。フライブルク大学やミュンヘンの森林機関においては林業史の専門家にヒアリングする機会を得、文献収集を同様に行った。この際、昨年度までの調査内容が予備知識として役立ち、とくに北海道調査で得たプロシャ林業とスイスのカントン・ヌーシャテル林業の関係についての予備知識から、両地域の歴史的結合関係について貴重な情報を得た。 上記の調査は、昨年度作成した関連専門用語の仏・伊・独・英・日対照表のプロトタイプを更新しながら行った。ドイツ国内でも、地域によって山林監守人的存在を初めとする法制度上の専門用語の呼称が異なることが判明した。 ドイツ語圏の大学や研究機関の蔵書検索は、多くの場合、パスワードの入手が必要で、現地訪問と現地研究者の協力なしでは、進めることができなかった。 上記のすべての意味で、インターネット技術の発達した今日においても、現地訪問調査によってはじめて資料情報収集が可能となった点を特記したい。 今後も、昨年度に引き続き、フランス、日本、ドイツでの先行研究に依拠しつつ、山林監守人の役割に焦点を当てて、欧州林学の日米への波及過程を研究することとした。
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