Research Abstract |
実大の構造部材(柱,梁など)に対して新しく開発した方法により強度(ヤング率)を推定すると同時に,解体後,静的負荷による曲げ強度試験を実施し,両者から得られる強度値の比較・検討を行い,部材保有強度推定法の妥当性を確認し,実用化に結びつけようとした.そのため(1)解体改築予定の寺院等木造建築物の骨組構造を成す構造部材の応力波伝播速度を測定すること,(2)新しく開発した方法(特願2006-058443)により部材のヤング率・密度を推定すること,(3)解体した構造部材を実大曲げ試験に供し,曲げヤング率・曲げ剛性を測定すること,(4)新開発の方法による推定ヤング率と実大曲げヤング率を比較し,両者の整合性を検討し,必要に応じて補正係数等を導出することを行った.数十本の解体古材について応力波伝播速度を測定し.これを基に新開発の方法による推定ヤング率と,曲げ試験による曲げヤング率を得た.同時に個々の古材に存在する切欠等の断面欠損に関するデータを採取した.これらより,応力波伝播速度だけを基にして,部材のヤング率を推定できることが確認できた.すなわち,応力波伝播速度のみから推定したヤング率は曲げヤング率とよく一致し,有用性の高い,実用的な方法であることがわかった.また,推定ヤング率は,別途求めた密度を用いてρV^2より求めたヤング率ともよく一致した.これらの成果は,裏面に示すとおり材料学会,木材学会,建築学会で発表した.また,2編の論文を査読付の外国雑誌に投稿中である. 解体材の曲げ剛性(建物を設計する際に重要となる材料強度物性値の一種)について,応力波伝播速度による剛性の推定値と比較,検討した.これより解体材に含まれる切欠きの大きさをパラメータとする曲げ剛性の補正式を誘導した.しかしながら,これまでのところ曲げ剛性の推定精度はあまり良くなく,曲げ剛性の推定精度の向上については平成20年度の検討課題として残された.
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