2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19580199
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
前川 光司 Hokkaido University, 北方生物圏フィールド科学センター, 教授 (80002301)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
後藤 晃 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 教授 (30111165)
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Keywords | 繁殖行動 / マイクロサテライトDNA / 攻撃 / 順位 / 中型個体 / 受精成功 / サクラマス雄 |
Research Abstract |
サクラマス(サケ科サケ属、Oncorhynchus masou)雄には、降海し海で成長した後、産卵のために川に遡上する大型の降海型と、生涯河川に留まって成熟する小型の残留型の2型が知られている。繁殖集団にサテライトとして参加する残留型集団には個体間に順位があり、順位の低い残留型はより順位を高めるように、繁殖集団間を移動し、結果として移動範囲が広くなると予測される。北海道鹿追町然別湖に流入するヤンベツ川支流(山田川)において1.5キロの調査区間を設定して行動観察を行った。また、野外において親魚を捕獲し個体識別を施し、サクラマスの繁殖行動およびマイクロサテライトDNAによる雄の繁殖成功、残留型オスによる食卵行動を観察し受精卵の父性を調べた。その結果、繁殖集団内の個体の順位は体長と相関していた。また、繁殖集団内の順位と繁殖成功率は有意に相関していた。繁殖集団内での高順位(1or2位)獲得率ごとに体長で大型、中型、小型の3グループに分け、繁殖期間中の移動範囲(距離)を比較すると、グループ間で有意な差が見られ、中型個体の移動範囲が最も広かった。常に高順位を獲得できる訳ではない中型サイズの雄が繁殖期間中に最も広い範囲を移動して、自分にとって有利な繁殖集団に加わり高順位を獲得しようとしていると考えられた。一方、移動しても高順位を獲得できる可能性が低い小型の雄や、同じ地点にいても常に高順位でである大型の個体はあまり移動する必要がないと考えられた。行動およびDNA解析の結果、繁殖集団中で大型で高順位な個体の繁殖成功が高いことがあきらかとなった。また、受精卵の父性および食卵行動の観察から、卵の父性とは無関係に食卵していると考えられた。メスの放卵時に産卵床に接近できて食卵が可能ならば、食卵している可能性がある。
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