2007 Fiscal Year Annual Research Report
分子生態学的アプローチによるワカサギにおける生活史分岐の実態解明
Project/Area Number |
19580200
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
池田 実 Tohoku University, 大学院・農学研究科, 助教 (70232204)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片山 知史 独立行政法人水産総合研究センター, 中央水産研究所浅海増殖部, 主任研究員 (30224455)
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Keywords | ワカサギ / 生活史分岐 / 分子生態 / DNA多型 / 耳石 / 微量元素 / ミトコンドリアDNA / マイクロサテライトDNA |
Research Abstract |
本研究は、ワカサギの生活史分岐(滞留型と遡河回遊型)の実態解明を分子生態学的アプローチにより解明することを目的としている。初年度である19年度は、以下の成果を得た。 1)マイクロサテライトDNAの開発を試み、集団解析のマーカー候補として40個のマイクロサテライト領域を単離した。 2)ミトコンドリアDNAの解析マーカーとしてシトクロームbおよび調節領域が適当と考えられた。 シトクロームbのダイレクトシーケンス分析により、日本沿岸の主な海跡湖のワカサギ集団はそれぞれ地域特有のハプロタイプを有しており、大きな遺伝的分化が生じていることが明らかとなった。特に、北海道沿岸におけるワカサギ集団についてはAFLP法も併用して詳しく調査を行い、これまで人為移殖に由来すると考えられてきた太平洋沿岸の集団(風蓮湖と別寒辺牛川)が、他の石狩川や網走湖と同様に地域特有の遺伝的組成を有していることが明らかとなった。 4)それぞれ異なる産卵場において採集された小川原湖の滞留型と遡河回遊型のワカサギについて、耳石の形態観察ならびに微量元素の測定を行い、生活史型の耳石レベルでの判別について解析を行ったところ、形態では75%、微量元素では95%の正答率を示した。 5)耳石分析に基づいて、小川原湖における滞留型と遡河回遊型の個体を分類し、シトクロームbのダイレクトシーケンスによって系統解析および集団解析を行った結果、相互に近縁なハプロタイプを保有しており、ハプロタイプ頻度に有意な差異は検出されなかった。このことは、少なくとも小川原湖におけるワカサギの生活史2型は、同一のミトコンドリアDNA系統を共有しており、2型間の系統分岐が生じているわけではないことを示唆している。
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Research Products
(4 results)