2009 Fiscal Year Annual Research Report
分子生態学的アプローチによるワカサギにおける生活史分岐の実態解明
Project/Area Number |
19580200
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
池田 実 Tohoku University, 大学院・農学研究科, 准教授 (70232204)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片山 知史 独立行政法人水産総合研究センター, 中央水産研究所浅海増殖部, 主任研究員 (30224455)
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Keywords | ワカサギ / 生活史分岐 / 分子生態 / DNA多型 / 耳石 / 微量元素 / ミトコンドリアDNA / マイクロサテライトDNA |
Research Abstract |
前年度までに準備できたマイクロサテライトDNAおよびmtDNAマーカーにより、小川原湖におけるワカサギの遡河回遊型84個体(2008年2月に高瀬川に遡上した0+個体)と滞留型48個体(湖内南部の産卵場所に2008年3月に蝟集した0+個体)について、各個体の耳石のSr:Ca比から生活史型の確認を行った上で、そのハプロタイプ組成ならびにアリル頻度を比較した。その結果、遡河回遊型と滞留型間にはmtDNAのハプロタイプ頻度に有意差はみられなかったが。マイクロサテライトDNAでは有意な遺伝的差異がみられた。しかし、その程度はF_<ST>=0.01と微弱なものであった。STRUCTUREソフトウェアを用いたベイズ法によるクラスター解析の結果、小川原湖の個体群全体が2つの集団(K=2)に由来する遺伝子型から構成されていることが示された。しかし、これらの遺伝子型と生活史型の区分とは一致せず、いずれの生活史型にも2つの集団(AとB)に由来する遺伝子型がほぼ同程度で含まれていた。この結果は、小川原湖のワカサギ個体群全体は、過去に存在した2つの集団の混合によって形成されているが、生活史型分岐とは関連しておらず、生活史型間に明確な遺伝的差異は生じていないことを意味している。前年度に小川原湖起源であることが判明した十和田湖個体群についても同様の解析を行ったところ、十和田湖個体群にはA集団に由来する遺伝子型が卓越していたが、創始者効果をはじめとするドリフトによるものなのか、それとも適応の結果によるものなのかを判断することはできなかった。
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Research Products
(1 results)