Research Abstract |
沿岸海域に生息する鯨類であるスナメリは,人間の生産活動の影響を受けやすく,個体数の減少が危惧されている.本種の分布は仙台湾以南の内湾性の強い海域にほぼ限定されており,その中でも分布密度は一様ではない.主分布域の1つであった瀬戸内海では東部で分布密度が極度に低くなっている(Shirakihara, et. al.2007).本種の保全のためには,分布を制限する環境要因を明らかにし,分布域や分布密度の減少を引き起こした人為的要因を特定することが重要である。 主対象海域を有明海〜橘湾および瀬戸内海として,スナメリの分布と環境要因の関係を説明する生息地モデル(habitat model)の開発に着手した,前者での最新の分布状況を知るために,セスナ機からの目視観察を全域で実施した.瀬戸内海を対象として地形(離岸距離,水深,底質,勾配),水温,塩分,基礎生産力など,スナメリの分布との関連が想定される環境要因を地理情報システム(GIS)を用いてデータベース化した.離岸距離水深,底質,勾配を取り上げ,ロジスティック回帰分析を用いて,本種の発見確率の地理的相違を説明するモデルを作成した.水深50m以浅,底が泥質,勾配の緩やかな海域でスナメリの発見確率が高い結果となった.分布密度の高い周防灘を除くと,岸や島の近くで発見確率が高かった.半分のデータでモデルを作成し,残りのデータで発見確率の予測を試みたところ,十分に高い予測が行えた.これら地形要因は本種の分布を直接的あるいは間接的に規定する要因である.
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