2008 Fiscal Year Annual Research Report
海産魚のウイルス性出血性敗血症の予防免疫に関する研究
Project/Area Number |
19580204
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
一色 正 Mie University, 大学院・生物資源学研究科, 准教授 (30378319)
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Keywords | 水産学 / 魚病学 / ウィルス / ワクチン / ウイルス性出血性敗血症 |
Research Abstract |
海産魚のウイルス性出血性敗血症(VHS)は冬季を中心とする低水温期に流行し,甚大な被害を引き起こす疾病であり,その対策にはワクチンによる予防が重要である。本研究では実用化できるホルマリン不活化ワクチンの開発に繋がる基礎的知見を得ることを目的に,変温動物である魚類の生体防御機構が水温の影響を受けることに着目し,ヒラメを用いてワクチン実験を行った。平均体重10gのヒラメにVHSウイルスKRRV9822株のホルマリン不活化ワクチンを注射免疫(10^<8.05>TCID_<50>/尾)し,12, 20および28℃の各水温で19〜21日間飼育後に12℃で攻撃試験を行い,各水温群(12, 20および28℃群)別の有効性を検討した結果,12および28℃群における全てのワクチン区および対照区の死亡率が100%となり,ワクチンの有効性が認められなかったのに対して,20℃群の死亡率はワクチン区と対照区との間で有意な差異が認められ(p<0.01),防御効果(RPS)は31および66を示した。また,20℃群における防御効果は追加免疫後にも維持された(43および55)。一方,同様にして大型のヒラメ(平均体重100g)を免疫した結果,RPSはさらに高い値を示した(89および95)。さらに,このワクチン接種により誘導された感染防御効果は少なくとも免疫98日後まで維持された。 以上の結果から,本ホルマリン不活化ワクチンの効果は免疫時とその後の飼育水温に依存し,ヒラメの至適水温20℃でワクチンを接種後,同じ水温で飼育した場合のみに有効性が確認されることが明らかとなった。したがって,本ワクチンを飼育水温が低下する前の時期,あるいは加温飼育期間中に接種してヒラメの防御免疫を誘導しておくことにより,低水温期のヒラメVHSを効果的に予防できる可能性が示唆される。
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