2007 Fiscal Year Annual Research Report
貧困国農村における農家のリスク対応に関する比較制度論的研究
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19580251
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
福井 清一 Kobe University, 国際協力研究科, 教授 (90134197)
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Keywords | リスク / 農村制度 / 利他性 / 信頼 |
Research Abstract |
途上国における農村開発プロジェクトを効果的にするには、農村の伝統的な社会経済システムの存在意義を理解しておく必要がある。本研究の課題は、このような伝統的社会経済システムの編成原理を、それと深く関連していると考えられる、利他性、信頼、社会関係資本などの决定因を考慮する新しい分析手法を用いることによって明らかにすることにある。 本年度は、カンボジアを対象に、2007年10月から12月にかけて、貧困農家家計における不作や、世帯主の疾病などのショックによる、児童の就学状況、健康・栄養状態、児童労働等への影響を、伝統的な相互扶助の制度が、どの程度緩和しているのかについての調査研究を実施した。調査では、コンポンスプー州、タケオ州の低地稲作農村地帯で貧困層の割合が5割を超える4農村を選定し、農家経済(所得、資産、農業、非農業への就業状況)世帯特性(年齢、家族構成、就業形態、教育水準)、児童の特性(就学状況、健康・栄養状態、労働、年齢、性別)、社会関係資本の蓄積状況などについて、計170世帯から聞き取りを行った。 これらの事態調査によって収集された資料をもとに、農家行動モデルから導き出された、児童の教育成果、健康・栄養状態の指標を被説明変数とし、それと関連すると予想される世帯特性、児童特性、社会経済システムの代理変数、および、不作、失業、疾病などの予期できないショックを説明変数とする計量モデルの推計作業を行い、社会関係資本やコミュニティーの相互扶助的慣行が、経済的ショックによる児童への影響を緩和していることを明らかにした。
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