2008 Fiscal Year Annual Research Report
貧困国農村における農家のリスク対応に関する比較制度論的研究
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19580251
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
福井 清一 Kobe University, 国際協力研究科, 教授 (90134197)
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Keywords | リスク / 農村制度 / 利他性 / 信頼 |
Research Abstract |
従来、貧困国におけるフォーマルな農村開発プロジェクトは、伝統的な社会システムの編成原理を考慮せず実施されてきたことが一因となり、期待された成果をあげられなかった。本研究は、貧困農村における、リスクを回避するために形成されたインフォーマルな伝統的農村制度(贈与交換、疑似信用、分益小作)に焦点を当て、利他性、互酬性、社会関係資本などの要素を取り入れることによって、その編成原理を解明し、有効な貧困削減プログラムの考案に資することを目的とする。 本研究の主要な成果は以下のとおりである。 1.初年度においては、カンボジア低地稲作農村地帯の家計調査にもとづき、農村家計によるリスク・プールの方法としての贈与交換、疑似信用の慣行、児童労働の利用などのテーマについて分析を行い、農作物の被害や家計の担い手の疾病・死亡などのショックによる影響を緩和するために、贈与交換の慣行が活用されていることを明らかにした。また、資産保有額や社会関係資本の蓄積が大きいほど、贈与交換や疑似信用への参加が促進されるという新事実を見出した。 2.2年目においては、インドネシア、中部ジャワ稲作農村における家計の実態調査にもとづき、リスク・シェアリングを目的として選択されると考えられてきた分益小作契約の決定因について、利他性、信頼、互酬性などの要素をも考慮に入れるために実験ゲームの手法を導入することにより分析を行った。その結果、期待効用仮説の妥当性が疑問視され、小作農の危険回避度が高いほど分益小作が選択されやすい一方で、収量変動によるリスクが大きいほど定額小作が選択されやすい、という。リスク・シェアリング仮説とは相いれない分析結果を得た。
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