Research Abstract |
20年度は,昨年度に引き続いて,水田,米政策の変革下の水田農業の動向を統計と実態調査を実施した。現行の生産制限を通じた価格維持を目的とした生産調整政策が限界に来ており,政策転換の必要性を統計,実態,理論面から明らかにした。まず,生産調整もただ乗り者の増加によって,過剰生産が恒常化し,米価水準が低下している。というのは,生産調整による価格維持のメリットは,生産調整の実施者も未達成者にも価格を通じて平等に享受できるからである。その結果,大規模経営も集落営農も米価格低下と生産調整の拡大により,その存立条件が困難となっていることを明らかにした。同時に,大規模水田経営は,水田経営安定対策及び生産調整の奨励金や補助金への依存体質であることを実証した。さらに,価格維持によって,米消費は,主食用も加工用も減少し,新たな消費も拡大できなかった。転作作物である麦,大豆も様々な奨励措置にも係わらず定着したとは言い難い。そのため,水田は,稲の作付減と耕作放棄地の増加という事態に直面している。つまり,水田農業は人,農地,需要,営農,政策の面での空洞化が進展している。以上の諸課題を解決するには,輸出や米粉,餌米等の主食用以外の用途を新たに拡大することが必要である。そのためには,米粉,エサ米用を含めた米の価格水準を引き下げるとともに新たな奨励措置が必要となっている。したがって,現行の生産調整を転換し,需給実勢を反映した価格水準を実現するとともに大規模生産者のコストとの差額を直接支払することが必要なことを実証した。なお,米消費の減少,農地の空洞化,経営の悪化については「揺らぐ農業と農村の存立条件」で,現行の生産調整の矛盾と直接支払制度については「価格維持型農政から直接支払制度への遥かな途」によって成果を発表した。さらに,米政策とくに流通面での規制緩和の下で,消費者の米に対するニーズが,品質,銘柄から価格,安全性ヘシフトしており,流通面では,業務用需要の拡大及び業者間の競争が激化したことも,米価低下の要因であることを明らかにした。さらに,流通ルートによって,同一銘柄であっても価格や流通コストが異なることを実証した。以上は,「激変する米の流通」で成果を発表した。
|