Research Abstract |
教育の貧困削減効果を分析するため,世帯特性,世帯主特性,配偶者特性に関する変数が,貧困世帯となる可能性とどのような関係となるかをジャワ島中部ジャワ州のデータを使用し,分析した。その結果,貧困世帯になる確率を低下させる要因として,教育水準の向上が非常に重要であることが分かった。しかし,同じ農村においても就業セクター別に教育の収益率を計測すると,セクターにより大きく異なる。収益率を比較すると,商業が一番低く,次に農業,サービス業で,製造業が一番高くなり,一番低い商業と最も高い製造業の差は著しく大きい。これに対して都市では各セクターの収益率が10%前後で,セクター間格差が農村ほど大きくない。こうした結果は,農村では単に教育水準を向上しても,商業や農業に就業しているかぎり,世帯所得の拡大につながらず,教育の貧困削減効果は小さい。世帯所得の拡大には,農業から農村非農業や都市における就業機会への移動がより重要となる。 そこで,家計の要因と家計周辺の経済的要因とが貧困削減に及ぼす影響を分析するため、家計周辺要因を付加して,教育レベルが農業から非農業への移動に及ぼす変化を計測した。この場合,移動を説明する変数は家計データと村落データの同時利用,詳細には世帯特性,世帯主特性,配偶者特性,家計周辺経済状況を使用した計測とした。その結果,20歳の独身男子の場合,高校卒業程度の教育レベルでほとんど全ての世帯主が非農業に就業することが判明した。周辺経済状況に関しては,インフラ整備が高いほど,また金属加工・機械製造業が盛んなほど,非農業セクターへの就業確率が高くなることが分かった。
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