Research Abstract |
本研究の課題は,経済実験のアプローチを用いて,環境保全型農業経営をはじめとする経済主体のリスク態度を明らかにするとともに,それを通じて,環境保全型農業経営の行動や消費者行動を分析し,リスク態度に整合した農業環境政策のあり方を検討することにある。 本年度は,滋賀大学経済学部において64名の学生を対象として,差別価格型と一様価格型の環境保全オークションによる経済実験を実施するとともに,昨年度データベース化したアンケート調査の分析を進めた。 その結果,環境保全型オークションによる農業環境政策を実施した場合,理論的には差別価格型オークションと一様価格型オークションは効率性が同じになることが示唆された。一方,実験結果からは,差別価格型オークションによる政策実施は,一様価格型オークションに比べて環境便益が小さくなるが,補助金支払総額は一様価格型オークションに比べて小さくなることがわかった。また,政府が政策の費用効率よりも便益の大きさを重視する場合,一様価格型オークションの実施がのぞましいことが示唆された。 他方,アンケート調査の結果からは,食の安全性に対する関心の強い農家ほど,環境保全型農業に取り組むことが確認された。このことから,食品安全性というリスクに回避的な態度を取る生産者ほど,環境保全型農業に取り組む傾向にあることが示唆された。 以上,得られた成果の一部は関連学会において報告済みであるが,今後,アンケート調査と経済実験に関する分析をさらに進め,関連学会ならびに学術雑誌等において公表予定である。
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