Research Abstract |
本年度は「水田土壌の種類の違い」による,高度処理水の水稲生育への影響の差異を解明することを目的とした.そして,愛媛県0地区の高度処理水と河川水に安定同位体トレーサー(^<15>NO_3とP^<18>O_4)を微量溶解させた水を灌漑水とし,降雨遮断条件・JA基準施肥の下で,0地区の灰色低地土,つくば市の黒ボク土,八郎潟の干拓地土壌で,水稲のポット栽培を行った.その結果,1.灰色低地土では,河川水利用より処理水利用で,地上部全体及び籾の乾燥重量,籾の登熟歩合が増加した.黒ボク土と干拓地土壌では,その傾向は明確でなかった.玄米千粒重および水稲の分げつ数・最大草丈・葉緑体含有量には,全ての土壌で,河川水利用と処理水利用で差は殆ど無かった.2.処理水中のNO_3-Nの水稲地上部への移行率は,灰色低地土13.3%,黒ボク土10.7%,干拓地土壌9.9%と差があった.また,河川水利用に対する処理水利用でのNO_3-N移行率の上昇は灰色低地土3%,黒ボク土-0.5%,干拓地土壌1.5%であり,水稲生育に好影響が見られた灰色低地土での,処理水中のNO_3-Nの肥料効果が,他の土壌より高かった.3.カチオン類(K・Na・Ca・Mg)の水稲地上部の総含有率は,全ての土壌で河川水利用より処理水利用で上昇し,処理水利用でカチオン類に富んだ水稲が生育した.ただし,上昇が顕著だったのはNaに限られ,処理水利用によるNa含有率の上昇程度に,土壌による差は殆ど無かった.以上より,高度処理水の水稲生育への効果および肥料効果が高いのは,灰色低地土であることが明らかとなった.灰色低地土は,日本の水田の約40%を占める主要な水田土壌である.従って,本研究の成果は,高度処理水が,日本の多くの水田で,極めて有効な水資源・肥料資源として働くことを示し,今後の高度処理水の水田利用の活発化,すなわち,持続可能な循環型社会の発展に大きく寄与する.
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