Research Abstract |
集落排水の高度処理水に含まれるNO_3^-・Na^+・SO_4^<2->が,水稲の生育や栄養吸収に及ぼす影響を明らかにするため,安定同位体トレーサー(^<15>NO_3^-)を使った水稲ポット試験(施肥はJA基準)を実施し,以下の知見を得た.1.高度処理水(NO_3-N1.5mg・L^<-1>)と,高度処理水にNO_3^-を添加してNO_3-Nを5・10mg・L^<-1>に高めた水を使った試験により,処理水中のNO_3-N濃度が高くなるにつれて,それにほぼ比例して,処理水中NO_3-Nの水稲への移行量(肥料として有効利用される量)は多くなることが分かった.一方,籾収穫量は,NO_3-N濃度が高くなるにつれて減少し,処理水のNO_3-Nを5mg・L^<-1>以下の範囲で低めに保つことが,河川水利用時よりも多くの籾収穫量を得るために重要であることが明らかとなった.2.河川水と,河川水にNa^+を添加し,Na^+を処理水並の50・100mgL^<-1>に調整した水を利用した試験によって,処理水中のNa^+は,草丈短縮(耐倒伏性の増大),有効分げつ数の増加,登熟歩合の増大といった生育に対する好影響因子として働いていることが分かった.ただし,Na^+濃度の上昇は,籾の収穫量増大には繋がらず,処理水による収穫量増大効果は,Na^+以外の成分(例えばK^+)の影響と考えられた.3.河川水と,河川水にSO_4^<2->を添加し,SO_4^<2->濃度を処理水並の60mgL<-1>に高めた水を利用した試験により,処理水中のSO_4^<2->は,籾収穫量を低下させる影響を及ぼすことが分かった.また,その影響は,処理水の土壌浸透速度が遅い場合に大きくなること等が明らかとなった.従って,処理水のSO_4^<2->濃度を低く保つことができれば,高度処理水の収量増加効果は更に高まる可能性が示唆された.これらの知見は,高度処理水のより安全で効果的な水田への利用技術確立に繋がり,持続可能社会の構築に大きく貢献する.
|