Research Abstract |
本研究では,海岸帯水層への海水侵入の制御機構の解明,および工学的対策が地下水流動に及ぼす影響について,室内可視化実験および数値解析による検討を加えた.ここでの工学的対策としては,止水壁方式,浸透池方式,注水井戸方式の3ケースとした,これらに対して,地下水中における侵入海水の挙動について,まず,ガラス球を一様に充填した鉛直2次元断面水槽を用いた室内実験による検討を加えた,実験結果によれば,止水壁方式による海水侵入制御が最も効果的であり,下部の不透水層と止水壁下端が一致している場合,すなわち地下ダム方式に相当する場合には,内陸部に残留した海水は時間とともに排除されることを明らかにした.また,浸透池方式に比べて,注水井戸方式の方が,同一注入量の場合には,侵入海水を海側へ押し戻す効果が大きいことを示した.次に,これらの実験における海水と淡水の流動を検討するために,密度効果を考慮した地下水中における移流分散解析(米国地質調査所USGSによるSEAWAT2000)によるコンビュータシミュレーションを行った.その結果,止水壁方式では,帯水層中に設置した止水壁により内陸部への海水の供給が遮断され,淡塩水混合域で分散により希釈された塩分が,陸側から海へと向かう淡水流れにより,徐々に排除されることを明らかにした.また,注水井戸方式では,海水侵入先端部の直上での淡水注入が,侵入海水の後退に及ぼす効果が最も大きいことを明らかにした,以上は,これまで不明であった海水侵入制御のための工学的対策に伴う地下水中における海水の挙動を明らかにしたもので,水文・水資源学分野において学術的意義の高い研究成果である.
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