Research Abstract |
マイクロ水力発電を行う際,その起動力となる水車を効率よく稼働させることは安定的な電力確保に向けて重要なポイントとなる.本研究では,大学の実験室を利用し,傾斜水路,管水路,落差工に水車を設置した場合の動力特性あるいは発電特性について計測し考察を行った.傾斜水路および落差工に設置する水車には,富山県の産業遺産という歴史的価値があり,流下するゴミにも強いなどの維持管理上優れるらせん水車を採用した.また,管水路に設置する水車には,近代水車の一つで管内の圧力を利用できるクロスフロー水車を採用した.まず,傾斜水路にらせん水車を設置した場合,低流量・低落差の条件でも粘り強く稼働する動力特性が得られた.水車効率は概ね50%〜60%であり,安定的に稼働するために必要な流量は0.01m3/sであった.最も水車効率の高い傾斜は20°〜25°であった.実際に発電の実験を行ったところ,発電出力は150W,発電効率は25%程度であった.この値は従来の水力発電と比較するとかなり低い値であるが,小規模になるほど効率は低下すること,および水路の摩擦損失,増速機や発電機のエネルギーロスがあることを考慮すると,さほど効率が悪いとは言えない結果である.次に,管水路のクロスフロー水車であるが,発電出力は30W,発電効率は25%程度であった.クロスフロー水車は製作コストがかからず,管水路に有効であるという利点を有するものの,流入部および流出部のブレードに水流エネルギーが更に効率よく伝達できるような水流制御の工夫が必要である.落差工を利用した発電では,らせん水車を鉛直に設置し発電特性を計測した.従来のらせん水車に対して,流水を制御し,水車羽根に効率よく水のエネルギーが伝達できるように改良したところ,3.1kwの出力が得られた.これは発電効率が70%程度になることから,実用的に十分活用できるレベルに達したと言える.
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