2007 Fiscal Year Annual Research Report
鞭毛運動の細胞内情報伝達機構-鶏精子の可逆的不動化をモデルとして
Project/Area Number |
19580327
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
芦沢 幸二 University of Miyazaki, 農学部, 教授 (60128353)
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Keywords | 精子 / 鞭毛運動 / 情報伝達 / 運動調節 / リン酸化 / PI3キナーゼ / エストロゲンレセプター |
Research Abstract |
【目的】鶏精子は体温付近の40℃で運動を停止し、温度を下げると動き出す。これを温度による不動化現象と称しており、運動の再開にはCa^<2+>が関与していると示唆されている。Ca^<2+>が係わるとすれば、その細胞内移動に関係しているイノシトールリン脂質の代謝回転に作用するホスファチジル・イノシトール・3キナーゼ(PI3K)が運動調節に影響している可能性が考えられる。本実験では、PI3K阻害剤を用いて、この点を明らかにするために行った。 【方法】PI3K阻害剤としてLY294002を、対照試薬としてLY303511を用いた。細胞膜の存在する正常精子とTriton X-100で細胞膜を取り除いた除膜精子に、Ca^<2+>や脱リン酸化酵素の阻害剤であるカリクリンAを加え、その前後に阻害剤を添加して、経時的な運動性の変化を観察した。さらに、Western blotting法により、鶏精子にPI3K抗体に反応する抗原が検出されるか否かについても検討した。 【結果】PI3K阻害剤(0〜100μM)を単独に添加しても、正常精子あるいは除膜精子の運動性は、30℃及び40℃ともに濃度の差異による影響は認められず、30℃では活発な運動性を示し、40℃では不動化を起こしていた。これに対して、40℃で不動化を起こしている精子にCa^<2+>を添加すると運動は再開し、約60%の値を示した。ところがその後、阻害剤を加えると、運動性は10-20%まで低下した。添加順序を逆にしても抑制効果が認められた。一方、除膜精子に阻害剤を加えると、運動抑制効果は認められず、対照区と同様の値を示した。またWesternblotting法により、鶏精子内にPI3K抗体を認識するバンドが検出された。以上の結果から、40℃における鶏精子の運動調節にPI3Kの関与が示唆された。また、この酵素やその基質は軸糸あるいはそれに付随する細胞骨格系ではなく、除膜によって溶出する細胞膜あるいは細胞質に存在するものと推察された。
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