2008 Fiscal Year Annual Research Report
鞭毛運動の細胞内情報伝達機構-鶏精子の可逆的不動化をモデルとして
Project/Area Number |
19580327
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
芦沢 幸二 University of Miyazaki, 農学部, 教授 (60128353)
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Keywords | 精子 / 鞭毛運動 / 情報伝達 / 運動調節 / リン酸化 / 一酸化窒素 / アンドロゲンレセプター |
Research Abstract |
【目的】鶏精子は体温付近の40℃で運動を停止し、温度を下げると再び動き出す。これを温度による可逆的な不動化現象と称している。この現象は、精子鞭毛内の運動調節に関与する細胞内シグナル伝達系のいずれかが変化を受けることによって引き起こされると考えられている。しかし、このメカニズムの詳細については不明な点が多い。本研究は、一酸化窒素合成酵素(NOS)とアンドロゲン・レセプターに着目し、これらが鶏精子の運動調節に関与しているか否かにっいて検討したものである。 【方法】供試精子は、白レグ成鶏から採取・混合し、TES/NaCl緩衝液(pH7.4)で洗浄したものである。NOSの阻害剤としてL-NMMA、L-NAMEを、L-NNA及びL-NILを用いた。また、アンドロゲン・レセプターのアンタゴニストとしてflutamideを、アゴニストとして5α一dlhydrotestosterone(DHT)を使用した。 【結果】いずれのNOS阻害剤を添加しても、0-100μMの濃度域では正常精子と除膜精子の運動性に影響を及ぼさなかった。この現象は2mM CaCl_2や100nMカリクリンAの存在下でも同様であった。一方、30℃で活発に運動している正常精子にアンドロゲン・レセプター・アンタゴニストであるflutamideを加えると、運動性は濃度依存的に低下した。これに対して、アゴニストであるDHTを先に加えて、あとからflutamideを添加すると、flutamideの運動抑制効果は認められず、60%前後の値を維持していた。また40℃では、flutamideの有無にかかわらず、正常精子は不動化を起こしたままだった。これらの精子に運動促進物質であるCa^<2+>やカリクリンAを加えることで運動が再開した。しかし、その後flutamideを添加すると運動性は再び低下した。添加順序を逆にしても、flutamideの抑制作用を止めることはできなかった。Flutamideの代わりにhydroxyflutamideを加えても同様の結果が得られた。以上の結果から、鶏精子の運動調節にNOSは関係しないものの、アンドロゲン・レセプター活性が深く関与していると推察された。また、このレセプターは、細胞膜あるいは細胞質内に存在すると示唆された。
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