2010 Fiscal Year Annual Research Report
鞭毛運動の細胞内情報伝達機構-鶏精子の可逆的不動化をモデルとして
Project/Area Number |
19580327
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
芦沢 幸二 宮崎大学, 農学部, 教授 (60128353)
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Keywords | 精子 / 鞭毛運動 / 情報伝達 / 運動調節 / スペルミン |
Research Abstract |
【目的】鶏精子は体温付近の40℃で運動を停止し、温度を下げると動き出す。これを温度による可逆的な不動化現象と称している。しかし、この機構の詳細については不明な点が多い。本研究は、選択的にミオシンホスファターゼを阻害するスペルミンが、鶏精子の運動性に及ぼす影響を検討したものである。 【方法】供試精子は、白レグ成鶏から採取・混合し、TES/NaCl緩衝液(pH7.4)で洗浄したものである。精子の運動性の観察は、ビデオカメラと加温装置を取り付けた位相差顕微鏡を用いて行い、精子細胞膜の流動性は蛍光色素であるDPHを用い、蛍光分光光度計で蛍光の異方性比を算出することによって計測した。 【結果】0~0.5mMのスペルミンを添加して10分後の正常精子の運動性は、30℃では全ての濃度域で40%前後の運動性を示した。40℃では、ほぼ運動を停止していた。除膜精子においては、30℃では添加濃度が高くなるにしたがって運動性は有意に低下した(P<0.05)。40℃ではいずれの濃度域とも不動化現象を起こしていた。正常精子が活発な運動を行っている30℃において、スペルミン存在下でのCa^<2+>添加後の精子の運動性に変化は見られなかった。40℃では、スペルミン添加区において、Ca^<2+>添加後に急激に運動性が回復した。反対にCa^<2+>存在下でのスペルミン添加区では、30℃、40℃の両温度区において有意差は見られなかった。一方、除膜精子において、EGTA添加により精子の運動性は低下したが、スペルミン添加の有無にかかわらずCa^<2+>添加後に運動性は回復した。精子の細胞膜流動性は、30℃、40℃ともにスペルミン添加の有無に関係なく、ほぼ一定の値を示した。以上の結果から、スペルミンが鶏精子の軸糸に直接作用して運動調節に何らかの影響を及ぼしているものと推察された。
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