2008 Fiscal Year Annual Research Report
黄色ブドウ球菌由来スーパー抗原性毒素に対するウシ乳腺上皮細胞の免疫応答機構解明
Project/Area Number |
19580374
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Research Institution | National Agricultural Research Organization |
Principal Investigator |
林 智人 National Agricultural Research Organization, 動物衛生研究所生産病研究チーム, 主任研究員 (90297630)
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Keywords | 黄色ブドウ球菌 / スーパー抗原性毒素 / 乳腺上皮細胞 / 免疫応答 / ウシ乳房炎 |
Research Abstract |
乳房炎発症時主に障害を受ける細胞は乳腺上皮細胞(BMEC)であるが、この細胞に及ぼす細菌性スーパー抗原の間接的な影響を検討することを本年度の目的とした。免疫細胞を介したスーパー抗原が及ぼす乳腺上皮細胞の障害機序を明らかにすることができれば、大動物臨床において切望されている黄色ブドウ球菌性乳房炎の治療法の開発および予防法の開発に繋がる。本年度の研究により、以下の成果を得ることが出来た。 1、細菌性スーパー抗原で刺激した免疫細胞由来の液性因子をBMECに作用させることにより、BMECのIL-15mRNAの発現が誘導されることが明らかにされ、免疫細胞由来のサイトカイン遺伝子プロファイルによりそれを誘導する因子がIFN-γである可能性が示唆された。 2、遺伝子組換え型ウシIFN-γ単独でBMECを刺激しても同様にIL-15mRNAの発現上昇が見られたことから、BMECのIL-15mRNAの発現上昇を誘導する主な因子はIFN-γであることが示唆された。 3、T細胞をスーパー抗原で刺激するとIFN-γmRNAの発現上昇がみられたことから、BMECのIL-15mRNAの発現上昇を誘導するIFN-γの主な産生細胞はT細胞であることが示唆された。 4、BMECとT細胞の共培養の実験により、スーパー抗原の刺激がT細胞の反応を介してBMECに伝達されるのは6時間以内に起こることが明らかにされた。 以上のことから、乳房に感染した黄色ブドウ球菌が産生するスーパー抗原は、乳腺の炎症に関与している可能性が強く示唆された。実際の黄色ブドウ球菌感染では、乳房内で感染巣を形成した細菌がスーパー抗原を産生し、そこに存在するT細胞がスーパー抗原によって非特異的に活性化される。そのとき産生されるサイトカイン(特にIFN-γ)の作用を受けてBMECのIL-15遺伝子の発現上昇が起こり、その結果として炎症の誘導あるいは重篤化が起こるという機序の可能性が示唆された。
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Research Products
(16 results)