2008 Fiscal Year Annual Research Report
環境汚染物質の塩素置換体の遺伝子発現解析による生体への影響評価
Project/Area Number |
19580383
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Research Institution | Shizuoka Eiwa Gakuin University Junior College |
Principal Investigator |
久留戸 涼子 Shizuoka Eiwa Gakuin University Junior College, 食物学科, 准教授 (50205217)
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Keywords | 環境汚染 / 塩素処理 / エストロジェン / 多環芳香族炭化水素 / 遺伝子発現 |
Research Abstract |
多環芳香族炭化水素(PAHs)は、ダイオキシン類と同様、様々な燃焼過程で生成され、環境中に排出されている。また、近年PAHsに塩素が付加した塩素化多環芳香族炭化水素(CIPAHs)も、環境中から検出されている。これらの塩素置換体は、難分解性、蓄積性が増すとされ、生体への影響も危惧されるものである。そこで、生体への影響を評価するための基礎的なデータを得るために、遺伝子発現レベルの変化を、Human Breast Cancer and Estrogen Receptor SignalingとHuman Cancer Drug Resistance and Metabolismのパスウェイ解析を目的としたPCRアレイ(SAバイオサイエンス社)を用いて調べることにした。本研究では、PAHsの中でも、Phenanthrene (Phe)、Chrysene (Chry)、及び環境中ですでに検出されている、両者の塩素置換体である9-CIPhe、9, 10-Cl_2Phe、3, 9, 10-Cl_3Phe、6, 12-Cl_2Chryについて、乳癌細胞MCF7を用いて、エストロジェン(E_2)に対する応答性と比較しながら解析した。 上記PCRアレイに含まれる約150遺伝子のうち、いくつかに発現レベルの変化が認められた。Pheでは、塩素付加数に伴って、ATP-binding cassette, sub-family G, member 2 (ABCG2)、CYP1A1、CYP1A2、CYP3A4、Interleukin 6 (IL-6)、N-acetyltransferase 2 (NAT2)で、発現が上昇した。また、Fibroblast growth factor 1 (acidic) (FGF1)は、Phe及びその塩素置換体ともに高いレベルで発現していた。Chryでは、塩素付加により、Pheと同様に、CYP1A1、CYP1A2、IL-6の発現が上昇したが、CYP3A4、NAT2では、Pheと異なり、Chry、塩素置換体ともに発現量は低かった。ABCG2は、Chry、6, 12-Cl_2Chryともに高いレベルで発現していた。これらの遺伝子はいずれも、E_2に応答性を示さなかった。今後これらの遺伝子の発現の変化が生体にどのような影響を及ぼすのか調べる必要がある。
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