2007 Fiscal Year Annual Research Report
新規な抗菌活性を有する天然有機化合物の効率的不斉全合成法の開発
Project/Area Number |
19590017
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
伊藤 久央 Tokyo University of Pharmacy and Life Science, 生命科学部, 講師 (70287457)
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Keywords | 抗菌活性 / 天然有機化合物 / 全合成 / 光学活性 / スピロ環 |
Research Abstract |
バンコマイシン耐性菌に有効な抗生物質であるプラテンシマイシンの全合成について研究を行った.まず,申請書に記載した合成戦略に沿って全合成の検討を行った.その結果4環性骨格のうち二つの環の合成に成功したが,その後の環の立体選択的な構築について難航した.そこで次のように合成経路を変更した.まず安価な試薬であるアニスアルデヒドとこはく酸ジメチルを用いてStobbe縮合を行い,イタコン酸誘導体を得た.引き続きイタコン酸誘導体の炭素-炭素二重結合の還元と分子内Friedel-Craftsアシル化を行い,4環性骨格のうちの二つの環を有するテトラヒドロナフタレン誘導体を短工程で合成した.このものに対し,立体選択的な官能基の導入を行い,4環性骨格構築のために必要なパーツをすべて導入した.4環性骨格の構築は以下のように行った.すなわち,テトラヒドロナフタレン環上に存在する水酸基とイソプロペニル基の間で立体選択的ヨードエーテル化を行い3つめの環を構築した.さらに,フェノール性水酸基を利用して塩基性条件下加熱することにより,フェノール性水酸基のパラ位でヨードメチル基部位への分子内SN2反応が進行し,4環性骨格的構築に成功した.このものは,Corey教授らが最近報告したプラテンシマイシンの合成における鍵中間体であり,ここに形式的全合成を達成した.我々の経路はCorey教授らの経路と比較し,安価な原料と試薬を用い,さらに工程数も少なく効率的であると言える.また,今回行った合成はラセミ体の合成であるが,光学活性体は次のように合成可能である.すなわち,イタコン酸誘導体の炭素炭素二重結合の還元の際に不斉触媒を用いれば,光学活性体が良好なエナンチオ選択性を持って得られることがすでに知られている.今後は本触媒反応を適用し,光学活性体の合成を目指す.
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