2007 Fiscal Year Annual Research Report
テラヘルツ分光法及び量子化学計算による固体分散体中の医薬品分子状態の解明
Project/Area Number |
19590035
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
森部 久仁一 Chiba University, 大学院・葉学研究院, 准教授 (50266350)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 恵司 千葉大学, 大学院・葉学研究院, 教授 (50110341)
畑 昌之 松山大学, 薬学部, 准教授 (50241972)
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Keywords | テラヘルツ / 複合体 / 結晶工学 / 固体分散体 / 非破壊 |
Research Abstract |
複合体の結晶構造が明らかになっているチオ尿素-エテンザミド(EB),チオ尿素-2-メトキシベンズアミド(MB),尿素-MBのテラヘルツスペクトル測定を行い,各成分のスペクトルと比較することで,複合形成に伴うスペクトル変化,つまり振動状態の変化を考察した。また,テラヘルツ領域(<1.8THz)の振動モードを量子化学計算による振動モード解析により予測するための基礎的な検討を行った。テラヘルツ分光測定は,栃木ニコン社製Rayfact SpecTeraRT-10000を用い透過法で測定を行った。その結果,チオ尿素では0.2〜1.2テラヘルツ(THz)にブロードな強い吸収ピークが観察され,尿素ではピークは観察されなかった。チオ尿素で観察されたピークはチオ尿素の分子間水素結合の存在に起因するピークと推察された。各種複合体のテラヘルツスペクトルを測定したところ,チオ尿素-MB複合体ではチオ尿素由来のブロードのピークが消失し,MB由来のピークが低振動数側にシフトした。チオ尿素-EB複合体でもチオ尿素のピークは消失し,EB由来のピークがシフトした。これはチオ尿素分子間水素結合の消失とチオ尿素-薬物分子間の水素結合形成に伴う薬物分子の振動様式の変化によるものと考えられた。続いて,振動モードの計算に密度汎関数法を用いB3LYP及び6-31G+**レベルで実行したところ,MB単独における2つの振動は主にアミド基及びメトキシ基に由来するものであると推察された。このようにテラヘルツ測定による吸収スペクトルの変化は複合体形成に伴う構造変化を反映していることが明らかとなった。今回測定したスペクトル領域は評価が困難な低エネルギーの分子間相互作用を反映しており,今後の検討によりこれまで不明であったテラヘルツ領域の構造解析に役立つ知見になると考えられる。
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Research Products
(3 results)