| Research Abstract |
Src型チロシンキナーゼは細胞質で生合成されるが,N末端脂質修飾によって細胞膜に係留し,受容体からのシグナルを伝達し,増殖、分化、運動、生存などに深く関与する。Src型キナーゼはSrc/Lyn/Yes/Fyn/Lck/Hck/Fgr/Blkの8種類のメンバーから成り,細胞膜局在の他に,リソソームとゴルジ体や核内にも存在するが,細胞膜直下以外では機能は殆ど明らかでない。
本研究では,Src型キナーゼの輸送経路と局在を研究し,各メンバーのオルガネラ選択的な機能の特異性を調べた。(1)FRAP法などを駆使して研究したところ,c-SrcはLynと異なり,サイトゾルでの生合成後に細胞膜と後期エンドソーム/リソソームとの間を非常に速い速度で巡回していることが判明した。その際,c-Srcは膜係留状態からサイトゾルへ可溶性状態経ることで,速い移動が起こっていることを見いだし,膜輸送によるc-Srcの移動ではないことを示した。また,ひとたびc-Srcは活性化されると,SH2領域による蛋白質-蛋白質相互作用を介して細胞接着斑へ移動することも判明した。(2)Lynはc-Srcと異なり,サイトゾルでの生合成後にゴルジ装置膜の細胞質側にアンカーして,分泌経路を経て細胞膜に運ばれる。構造上c-Srcはミリスチン酸付加のみで,Lynはミリスチン酸付加とパルミチン酸付加をする。そこで,c-SrcとLynのトラフィッキングの違いに関してパルミチン酸付加に着目して研究したところ,LynのN末端から3番目のシステイン残基にパルミチン酸が共有結合することがトラフィッキングの違いを生み出すことが判明した。(3)c-Srcがリソソームのサイトゾル側の膜に係留することは,Rab7と相互作用してリソソームの動きを制御する可能性があることを見いだした。
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